週刊文春では先週より、戸部田誠(てれびのスキマ)の「日本テレビ『最強バラエティ』のDNA」が連載されている。12年連続で年間視聴率三冠の座に居続けたフジテレビを1994年、日テレが打ち破る。そのドキュメントである。

 第一回では、92年の「24時間テレビ」を日テレ躍進のポイントと捉え、その舞台裏を記している。78年に始まった「24時間テレビ」は、年を追うごとに注目度は下がり、前年には視聴率が6.6%に落ちるほど、低落していた。「その日だけは視聴率を諦めるというような番組」(当時編成局長、後の社長・萩原敏雄)であった。それをこの年、一新する。

欽ちゃんが走ったことも ©山元茂樹/文藝春秋

 生真面目なイメージのあったこの番組のメインパーソナリティにダウンタウン、総合演出には「タモリ倶楽部」などの制作会社「ハウフルス」の社長で演出家でもある菅原正豊を据えるなど、大胆にリニューアル。結果、視聴率は番組の歴代最高を塗り替える17.2%を記録する。

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 もたらすものは数字だけではなかった。なにしろ長丁場の番組のため、日テレの作り手たちが集結する。そのため制作の者同士の交流が起き、「作り方の共有と差別化」の場にもなったと、視聴率分析でフジテレビ逆転劇を支えた岩崎達也の考察を紹介している。

五味一男とは誰か?

「チャリティーだからって逃げないようにしよう」

 この年、会議のなかで、そう声を上げ続けた者がいた。それが連載第二回の主役、五味一男だ。

 第二回は「“落ちこぼれ”たち」と題して、日テレ内で88年に発足し、後の黄金時代の礎となる「クイズプロジェクト」の面々の、来歴と奮闘を著している。

 五味もその一員で、人気クイズ番組となる「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」、「マジカル頭脳パワー!!」を世に出す。それどころか、後に「『尖がった企画などは世帯視聴率の敵』という最強の五味一男イズム」(注)を日本テレビ内に浸透させるなど、隆盛を極めるまでになる。

「マジカル頭脳パワー!!」といえば司会の板東英二(右) ©三宅史郎/文藝春秋