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《河井夫妻買収、ゴーンも》東京地検エース・森本宏特捜部長に交代情報 後任にダークホース浮上

2020/07/07

「特捜検察エース中のエース」として鳴り物入りで2017年9月に東京地検特捜部長に就任した森本宏氏(52)に“交代人事”情報が流れている。今からちょうど10年前の2010年に発覚した大阪地検特捜部証拠改ざん事件という不祥事以来、低迷を余儀なくされた特捜検察。「完全復活があり得るなら、この男しかいない」といわれた森本氏は、特捜部長就任以来、期待を裏切らない功績を挙げてきた。その森本氏が特捜部長就任から3年を前に、地方の検事正ポストに栄転するとの情報が入ってきたのだ。

森本宏東京地検特捜部長 ©時事通信社

政・官・財の不正に切り込むエース

 森本特捜部が手がけた事件は、特捜検察史に大きな足跡を残してきた。リニア中央新幹線の建設工事を巡って大手ゼネコン4社が関与したとされる談合事件、スーパーコンピューター開発者を逮捕した助成金詐欺事件、文部科学省の局長級官僚を次々と逮捕した「文科省汚職事件」(医科大学の不正入試の実態も明るみに出た)、日産自動車のカルロス・ゴーン前会長らを逮捕した特別背任などの事件は世界に衝撃を与えた。

 そして、秋元司・衆院議員を逮捕した「IR汚職事件」、衆議院議員の河井克行前法相と妻の案里・参議院議員を逮捕した公職選挙法違反事件。政・官・財の3界の不正に挑み、立件した対象者は大物ぞろいだ。河井事件は夫妻の地元である広島地検との合同捜査ではあるが、秋元氏と合わせて国会議員計3人を逮捕した特捜部長は十分な存在感を世の中に発信した。検察捜査の新たな武器として刑事司法分野に導入された「司法取引」を初めて活用したのも森本特捜部だ。

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河井夫妻 ©AFLO/共同通信社

森本氏の早期の検事正への昇格は不可欠

 今回、検察庁法改正案を巡る騒動や黒川弘務・前東京高検検事長の賭け麻雀問題などで法務検察は強い逆風を受け、大きなダメージを受けたが、稲田伸夫・検事総長肝いりの事件とされる河井事件は社会に大きなインパクトを与えた。河井事件は間もなく逮捕から20日間の勾留満期を迎え、夫妻は起訴されることになるだろう。これを区切りとして、稲田総長は月内に林真琴・東京高検検事長に総長職をバトンタッチする見通しだ。この重要人事のタイミングからしても、河井事件はさらなる展開は見せないとみられる。

林真琴東京高検検事長と賭け麻雀問題で辞職した黒川弘務前東京高検検事長 ©時事通信社

 この総長人事に伴うものかは、まだ不透明だが、東京地検特捜部長の交代情報も流れてきたというわけだ。森本氏は同期の検事が既に多く地検トップの検事正に就任しており、検察組織としても早く森本氏を栄転させる必要があるのだろう。元々、森本氏は法務省在籍時の行政的手腕も評価されており、行政でも事件でも辣腕を振るう実力から「将来の検事総長」と目されてきた。そのステップとして、早期の検事正への昇格は不可欠だ。