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「Go To キャンペーン」では救えない…ついに始まる“宿泊業界の淘汰”で笑うのは誰か?

インバウンド需要が戻るには2〜3年かかりそう

2020/07/14

 今回のコロナ禍で最も深刻な影響を被ったのは、ホテルや旅館といった宿泊業界といわれている。実際、観光庁が発表する宿泊旅行統計調査によれば、20年4月の宿泊施設の客室稼働率は16.6%という惨憺たる成績に終わった。前年同月が64.7%だったことから、落ち込みがいかに深刻であったかがわかる。

 カテゴリー別にみても、ビジネスホテルは20年4月で25.2%(前年同月78.9%)、シティホテルは11.8%(同82.8%)と目を覆わんばかりの惨状だ。延べ宿泊者数でみても1079万人泊と、前年同月の23%の水準にまで落ち込んでいる。とりわけ外国人宿泊者数はわずか26万人泊に留まり、対前年同月比でなんと2.5%の水準になっている。

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2年前から韓国人訪日客は減少していた

 ホテルなどの宿泊業界には、一般的に以下の5つのリスクがあると言われている。

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(1)政治リスク
(2)戦争・テロリスク
(3)経済リスク
(4)天変地異リスク
(5)疫病リスク

 政治リスクとは、国同士の仲が険悪になり、両国の往来に影響を与えるリスクのことである。卑近な例では、日本と隣国・韓国との仲たがいが挙げられる。宿泊業界は今回のコロナ禍で大きく成績を落としているように見えるが、実際は18年夏くらいから、日韓関係が険悪になるにつれ、韓国人訪日客が減少していた。コロナ前の19年、韓国からの訪日客数は558万人にとどまり、対前年比で26%も減少している。

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 戦争・テロリスクも、心得るべきリスクだ。2001年にニューヨークでテロが起きた際、私は三井不動産の子会社の三井ガーデンホテルに勤務していたが、同じ三井不動産傘下のハワイの超高級ホテル「ハレクラニホテル」の稼働率が20%台にまで落ち込む姿を見聞している。ハワイとニューヨークは直線距離で8000キロメートルほど離れているにもかかわらず、その影響の激しさに驚いたものだ。

宿泊業界にとっては未曾有の危機

 経済リスクはリーマンショックのような大きな経済停滞が生じた結果、人々の移動が減少するリスクのこと。天変地異リスクは11年の東日本大震災のような大地震や火山の噴火、台風などの災害によるリスクを言う。