コロナ患者の受け入れが始まると、院内の勤務体制が大きく変わり、コロナ病棟に人員が割かれる分、各部署にしわ寄せが生じた。もちろんその中でも、最も負荷がかかったのはコロナ病棟の看護師だ。不慣れな防護服での仕事は負荷が大きく、小まめな休息が必要で、通常の病棟の倍以上の人員が必要となる状態だったという。
「入院する患者は必ずPCR検査を受けて、陰性を確認する規則になっています。ところが、夜間に緊急外来に訪れた患者さんが入院するとなると、すぐにPCR検査ができないので、コロナ疑いのある患者としてコロナ病棟に入院することになる。そうやって実際の感染患者の数以上に、コロナ病棟の入院患者は多くいました。
コロナ病棟を担当した看護師は、防護服のせいで体温が上がるだけでなく、長時間呼吸をしづらい構造の医療用マスクを着用するため、体力の消耗も激しい。志願してコロナ患者の病棟へ行った看護師の中には子供や家族がいる人もいましたから、心労も大きかったようです」(病院関係者)
人手が足りない中で命じられた「一時帰休」
そんな医療崩壊の危機と隣り合わせで激務をこなす看護師たちを待っていたのが、コロナを理由にした「減給」だった。
「私たちの病院では全看護師に特別手当や危険手当などは一切ありません。さらに、緊急事態宣言明けの6月に看護師の私たちに、上長から口頭で『一時帰休』が求められました。『月に必ず2日間とってください』と言われ、ほぼ強制的に一時帰休が6月のスケジュール表に組み込まれました。帰休中の賃金は60%に引き下げられた」
「一時帰休」とは、経営の悪化や業績低下に陥った際に会社側の指示で従業員を一時的に休ませること。東京女子医大の理事会は4月17日に職員に対して「一時帰休の実施」を通知。理由として「教職員の方々の生命身体の安全の確保を図りつつ、また他方で支出を抑え法人財政の悪化を少しでも軽減する」ため、としている。
「給与が減る問題以上におかしいと思うのは、現場はコロナ対応で人手が足りないのに休まなくてはいけなかったこと。病院側は現場のことを考えているとは思えません」(Aさん)