新刊と「崎陽軒のシウマイ弁当」の共通点とは

 9月16日公開の映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』原作者として注目を集める渋谷直角が、6年ぶりのコラム集となる『コラムの王子さま(42さい)』を上梓。一体どんな内容なのか。本人が綴ったエッセイをお届け。

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『コラムの王子さま(42さい)』渋谷直角

 女性誌『CREA』に連載していたコラムが本になりました。1冊にするにあたり、『コラムの王子さま(42さい)』という「だいぶ背負ったな」って感じのタイトルに変更したんですけども。アレです、『ドラゴンクエスト8』とか『11』で、王様にナイショで勇者をさんざんコキ使って、手柄は自分のモノにしちゃうヤツ、みたいな王子のイメージです。なので及川光博的な捉え方されるとアレなんですけど(してくれてもかまいませんけど)、タイトルに負けない極ファンシーな仕上がりになってますので、ゼヒ本屋さんで手に取っていただけると嬉しいス(色々仕掛けもあるので)。

 でも正直、こんなフザけた本が今でも出せるっていうのはありがたい半面、必要ないヒトにとってはガン無視されちゃう難しさもある。余裕のない時代だと余計に僕の本なんかは、「他に読むべきものがある」とか「価値がないもの」だと見なされがちです。アレに近いかも。

「崎陽軒のシウマイ弁当」の、「タケノコ」。アレ、食べたことあります? ごはんと、焼売が5つくらい入ってて、魚の照り焼きと鶏の唐揚げ、玉子焼きとかまぼこの入っているお弁当で超ウマイ。新幹線乗るときはいつも買っちゃう。でもその弁当、正方形に切られたタケノコの煮たやつも入ってて、ソイツがやったら多いの! 確実に焼売5個のボリュームを凌駕するほど入ってる。食べてると毎回、「……コイツ、多くね?」って思うんですよ。途中から完全に「タケノコを消費するためだけの時間」が訪れる。たまに限定の「大盛り」みたいな弁当を売ってるときがあって、焼売が1.5倍くらい増えてるんですけど、タケノコもなぜか3倍くらい増えてて。「いや、オマエはそのままでも多いんだよ! なんでオメー、焼売より倍々で来るんだよ!」みたいな。「タケノコ消費タイム」がさらに尋常じゃないことになるんです。

©渋谷直角

 でもそのタケノコの、むやみな存在感もいいよな、と最近は思ってて。焼売メインなのはわかってる。でも僕も美味しいよ!とグイグイ来る感じ。実際、食後の満足感はあるし、焼売食べたくて買ってるんだからタケノコは本来いらないモンなんだけど、やっぱり食べてると「多いな、コイツ」と思いつつもニヤニヤしちゃう。僕のこの本が、貴女にとっても「崎陽軒のシウマイ弁当のタケノコ」、になっていますように……と祈っております!

コラムの王子さま(42さい)

渋谷 直角(著)

文藝春秋
2017年8月30日 発売

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