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「棋士は遅い時間になればなるほどテンションが上がる」AbemaTVトーナメントの舞台裏

「棋士は遅い時間になればなるほどテンションが上がる」AbemaTVトーナメントの舞台裏

ABEMA将棋チャンネルプロデューサーに聞く #2

2020/07/17
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 新型コロナウイルス感染症流行によって将棋イベントはのきなみ中止、タイトル戦が延期される中、将棋ファンの話題の中心になったのは4月4日から放送されている第3回AbemaTVトーナメントだった。

 インタビュー後半では、誕生までのいきさつや、裏話、そしてこれからやってみたい企画などについて聞いてみた。

(全2回の2回目。#1を読む)
※文中の段位などは、インタビュー当時のものです

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◆ ◆ ◆

将棋を観て楽しむという文化の間口を広げたい

――AbemaTVトーナメントは、第1回から超早指しで行っています。羽生善治九段(当時竜王)のアイディアとのことですが、この企画が誕生したいきさつを教えてください。

過去に麻雀プロの資格を持っていたゼネラルプロデューサーの塚本泰隆さん

塚本 AbemaTVトーナメントや、炎の七番勝負など特別番組に共通していることとして、将棋を観て楽しむという文化の間口を広げたいという思いがあります。ニコニコ動画さんが先に将棋番組を配信していて、将棋を観る文化というのはありました。それをもっと広げたい。もともとの将棋ファンだけでなく、ちょっと興味があるくらいの人にも見てもらいたいし、ABEMAは若者に親しまれているメディアなので、若い層にも見てもらいたい。

 持ち時間5分で1手指すごとに5秒増えるフィッシャールールは、羽生九段から「時間の短いルールでやるのも面白いのでは」と話があり、取り入れることにしました。羽生九段の親しんでいるチェスで導入されているルールということでした。長時間考える将棋はもちろん魅力的ではあるけれど、超早指しならば、幅広い層が気軽に楽しめるライトな将棋番組が作れる。新たに「将棋って面白い、楽しい」と気付いてくれるきっかけとなるのではないかと考えました。

――第3回は3人の団体戦という新しい試みになりました。団体戦にした理由はなんでしょう。

塚本 私は2018年の麻雀のMリーグの立ち上げ、中継にも関わっています。Mリーグは企業がチームを持つ形でトップ選手のチームで争います。チームのために戦う姿、勝った仲間をハイタッチで迎える様子など、大きな反響を呼び大人気となっています。将棋も麻雀も頭脳スポーツという点では共通しており、将棋でも団体戦を取り入れたら、盛り上がるのではないかと考えました。

AbemaTVトーナメントの紹介ムービー

――チーム紹介ビデオが評判になりましたね。稲葉陽八段の「恋愛の失敗談」では「高校時代に連絡先を聞いた女の子の彼氏が不良で、不良グループに囲まれ、この世の終わりかと思った」とびっくりするようなエピソードが明かされたり、笑ってしまう話が次々に出てきました。

谷井 チーム紹介映像では、棋士同士で、恋愛のことなどきわどい質問をしてもらうパターンがよくありました。こちらとしては、濁していただいてもかまわなかったのですが、ストレートに答えてくれました。「普段できないことができたから、いい経験になった」と言って下さる棋士もいましたし、楽しい雰囲気の作品となり視聴者からも大変好評でした。

チーム稲葉の紹介ビデオ(ABEMA将棋 YouTubeチャンネルより)