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「棋士は遅い時間になればなるほどテンションが上がる」AbemaTVトーナメントの舞台裏

「棋士は遅い時間になればなるほどテンションが上がる」AbemaTVトーナメントの舞台裏

ABEMA将棋チャンネルプロデューサーに聞く #2

2020/07/17
note

棋士の新たな魅力も伝えたい

――作戦会議や、仲間の対局を見守る控室の様子を映すのも評判になっています。

塚本 これもMリーグでの知見が大きいですね。Mリーグでは、裏側を見せることで、選手の関係性や人間性が伝わり、ファンが増えました。AbemaTVトーナメントは早指しで大逆転とか何が起こるか分かりません。チームメイトの対局を見ての反応や、応援する様子、棋士同士のやりとりを見せることで盛り上がり、棋士の新たな魅力が伝わり、ファンが増えるという確信がありました。

自身は三間飛車を指すというプロデューサーの谷井靖史さん

――出演した棋士一人ひとりの人気が出るような演出で、藤井聡太七段の人気だけで終わらないようにしたいという意図もあるのですね。対局の合間に流すビデオでは石井健太郎六段「優勝賞金の使い道は?」、近藤誠也七段「師匠に差し上げます」、渡辺明三冠「そんなわけないだろう!」というようなチームでのコントも披露されました。Abemaドリームチームでも羽生善治リーダー(九段)が三枚堂達也七段のボケに「そっちじゃないだろう」とツッコミを入れ、「ちょっと無茶ぶり?」と思ったことも。棋士の皆さんの反応はいかがでしたか?

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塚本 恥ずかしがってNGになったり、噛んでうまくいかなかったりもありませんでした。むしろ、予想以上に皆さん楽しんでやってくださいました。こちらの「皆さんのファンを増やしたい」という思いを理解して、自分が注目してもらえる良い機会ととらえてもらったと思います。

――サイバーエージェントでは新卒採用にも、ドラフト制度を取り入れていると聞きました。今回のトーナメントでドラフトを実施したのは、そんな背景もあったのですか。

塚本 採用だけでなく、ドラフトはサイバーエージェントの文化として根付いている制度で、藤田社長が積極的に取り入れてきました。ドラフトのように選択をするということが、ドラマを生むという確信があったので、日本将棋連盟さんに今回はドラフトを取り入れたいと話をしました。最終的に、タイトルホルダーとA級の棋士の皆さんにドラフトをしていただくことができました。

棋士の皆さんが、個性あるチームになるように考えてくれた面はあると思います

――黄色いジャンパーを着て3人で指宿観光をする様子が竜王戦のブログで紹介された、豊島将之二冠、佐々木勇気七段、斎藤明日斗四段のチーム「GOOD BOYS」や、同級生3人の木村一基王位、行方尚史九段、野月浩貴八段のチーム「酔象」など、ファンが喜ぶ特徴のあるチームがそろいました。指名はすべてリーダー棋士にお任せだったのでしょうか。

塚本 もちろん、誰を指名してくれとか頼んだりしていません。ただ、棋士の皆さんが、個性あるチームになるように考えてくれた面はあると思います。ドラフトで指名があまり重ならず、くじの出番が少なかったのは意外でした。こちらは6人くらいで並んでくじを引くシーンを想像していたのですが(笑)。棋士なので、いろいろ他チームの指名を読んだり裏をかいたりしたのでしょうね。

 

――藤田社長も「Abemaドリームチーム」の総監督として出演されましたね。

塚本 羽生九段と藤田はABEMAができる前から親交があります。羽生九段のアイディアを生かしたAbemaTVトーナメントをどのようにするかは、第1回からずっと藤田と相談しながら進めてきました。今回は、総監督として作戦会議室にも登場し、羽生九段vs藤井七段の対局では「羽生さんが負ける姿って見たくないですね。藤井君が勝つ姿は見たいのだけど」と。チームは負けてしまいましたが、第3回全体は「立ち上がって観ることがあるくらい面白い」と評価していました。