300本分の「百合映画」によって「呪い」は解けたのか
と、ここまで述べてきた映画100本ほどを友人たちと実際に観ていき、手分けして執筆し仕上げたのが前身にあたる『百合映画ガイドブック』でありました。さらにそれを底本にして3倍の300本にまで膨れ上がったのが『「百合映画」完全ガイド』になりました。
『完全ガイド』のあとがきにも書いたのですが、「完全」からは程遠い代物になっています(共著者の一人は何度も「1000本だ、1000本必要だ」と述べていました)。さまざまな事情で1000本には届いていないのですが、とりあえずの「百合映画入門300」としてはこのぐらいのものでよかったのではないかと思っています。
では300本分の映画によってはたして、「呪い」は解けたのでしょうか。
心霊写真はそこに映りこんだものの原因や正体がたとえわかったとしても、映りこんだ「もの」が消えることはありません。「百合」もまた、わたしにとってそのようなものでした。
そしてまた、ソフト化されていない、ごく一部の上映に限られているなどの物理的な理由で、存在は確認しているものの、まだまだ未見な映画も夥しい数存在しています。たとえばレンタルビデオ店で働く主人公が『GO fish』と『ショー・ミー・ラヴ』を借りる人物と出会うことからはじまるというあらすじのiri『鼻歌をうたう私と颯爽とあるく彼女』、放火をしあう少女たちが出会う物語のアナ・コッキノス『only the brave』などなど……。『「百合映画」完全ガイド』原稿執筆当初は本国以外での鑑賞が不可能だった現在公開中の『はちどり』などを含め、更新されたさらなる「完全」書籍が、「呪い」をかけられた百合好きを自認する方々によって執筆されることを楽しみにしています。