「法律の制定手続きとその意図の両方に重大な懸念を抱いている」(Twitter声明)
「表現の自由は基本的な人権であり、安全やその他の影響を恐れることなく表現する権利を支持する」(Facebook声明)
中国が強行した「一国二制度」の事実上破棄となる「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)の施行に対して、世界で反発が広がっている。7月6日にはFacebook、Google、Twitterのアメリカの大手ネット企業がこぞって、香港当局への利用者情報の提供を一時停止すると発表し、その影響はインターネットの世界にも波及している。
中国社会に詳しいジャーナリストの高口康太氏が解説する。
「これまでGoogleをはじめとしたネット企業は、利用者が犯罪に関わっていると判断された際、捜査当局などから要請があれば、その国の法律に従って情報を提供してきました。たとえばFacebookは、昨年の香港で384件の要請を受け、うち約5割に応じたと公表しています。今回のアメリカのネット企業の対応は『香港当局に情報を開示すれば、中国に流れる。信用できない』と判断した結果です」(高口氏)
ネット企業のトラウマとなった「失態」
国家安全法が6月30日に施行されると、翌日には早速10人が同法で逮捕され、その後も令状なしでの家宅捜索が明らかになるなど、現地では動揺が広がっている。その影響について、長年現地を取材してきたジャーナリスト・安田峰俊氏が語る。
「国家安全法の最も注目すべき点は、中国が直接香港に治安維持機関『国家安全維持公署』をおいたこと。これまでなら、デモ参加者が香港で捕まっても香港の警察や法律に処分が委ねられていましたが、今後は中国大陸に送られ、中国の基準で処置されかねない。これはネット上での『犯罪』についても同様です」
国家安全法の施行規則では、SNSなどに投稿された情報が「国家の安全を脅かす」と判断されれば、ネット企業に削除などを求めることが出来る上に、従わなければ企業側も投稿者も罰金や禁固刑が科されるとされる。
しかし、ネット企業が最も恐れているのは、企業への削除要請や罰則ではなく、香港当局が入手した情報を使って、中国本土のように利用者を罰する事態だ。欧米企業の“トラウマ”となっている事件があるという。