昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

 現地からは、『正直、もうデモは無理じゃないか』という声が多く聞こえてきます。実際に、国家安全法が施行された直後の週末も、何の集会も開かれなかった。これまでなら政治家が失言しただけでも、週末には大規模な集会や抗議活動が行われてきました。それが突如として開かれなくなったわけですから、今後も表立った民主化活動は下火にならざるを得ないでしょう」(安田氏)

香港返還記念日の7月1日、国家安全法反対デモの参加者には厳しい取り締まりが行われた ©AFLO

香港を待ち受けるシナリオ

 国家安全法の影響で、世界有数のIT企業から見放されはじめた香港。前出の高口氏は、「中国政府が神経質に色々と口を出してくるようになり、政治的リスクばかりが大きな都市となった」とみている。

「香港は世界有数の金融都市とはいえ、人口はわずか約750万人。市場としての規模とリスクの大きさを天秤にかけて、世界のIT企業がさらに香港から手を引いてしまうかもしれない。投資が呼び込めなくなれば、香港のためにも中国のためにもなりません」(高口氏)

 この影響は香港の住民だけにとどまらない。中国発のグローバルIT企業に大きく影を落としている。

「近年、中国はIT分野でも世界的イノベーターを輩出する国になっています。高速通信規格5Gの基地局を世界に売り込むファーウェイ、任天堂とも提携し世界市場に出ようとするゲーム会社テンセント、人気アプリのTikTokなど、これから世界を相手に活躍しようとするグローバル企業が多い。中国は本来こうした自国企業の海外進出を効果的に後押ししたいところですが、全く出来ていません」(高口氏)

7月3日時点で時価総額約70兆円にもなる中国発のグローバル企業・テンセント ©iStock.com

 イギリスでは、国家安全法施行の1カ月前、安全保障上の問題があるとして、国内の5Gネットワーク網へのファーウェイ参入認可が撤回された。カナダも6月になって当面5G基地局にファーウェイ製品を採用しない方針を明らかにしている。TikTokもインドではすでに禁止され、アメリカやオーストラリアでも排除の動きが出ている。

 さらにはTikTokが、国家安全法を理由に香港市場からの撤退を決めるという事態まで起きている。