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「7月7日に香港撤退を発表したTikTokは、中国発の企業である看板を背負っていまの香港で事業を展開しても、『中国の手先だ』というマイナスイメージは拭えないと判断したのでしょう。つまり、世界を目指す中国企業が母国に背中から撃たれているような状況が続いている。これまで中国は『14億人の市場が欲しいなら言うことを聞け』と、海外から持ち込まれるサービスに口を出し続けてきましたが、いざ自国企業が海外に売り込もうという時に、援護射撃をするという発想に頭が切り替えられていないのです」(高口氏)

「ムキになっている」習近平政権の怖さ

 中国政府は香港の自国民にも弾圧の手を緩めないばかりか、世界に進出する自国企業の苦境もみえていないようだ。

「民主の女神」として知られた周庭氏は、国家安全法成立を受けてSNSでデモ団体の脱退を表明した

「2期10年だった国家主席の任期を自ら撤廃した習近平氏は、2年後の党大会で異例の3期目を迎えようとしていますが、彼にはいま2つのウィークポイントがある。それは悪化した『対米関係』と長引く『香港問題』です。国内向けに1つでも解決して成果を出したいところですが、これだけ米中貿易摩擦が激化していると、アメリカに対してこれ以上強い態度を取るのも難しい。となると、人口約750万人の香港に強権を発動するのは、14億人を抱える中国にすれば比較的『低コスト』なんです。

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 もちろん、香港政策に対する国際社会の反発は、中国政府も予想以上だったとも思いますが、施行後の運用を見ると『自分たちは法治国家です』というこれまでの対外的なスタンスを放り投げ、『多少の反発があっても腹をくくって強気にやる』とムキになっているようにも思える。そこに怖さがあります」(高口氏)

 北京の指導者たちの目には一体、なにが映っているのだろうか。