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「2000年代、中国の民主活動家が中国当局の弾圧の実情をEメールで海外に送信したところ、中国はこのユーザー情報の開示を要求。サービス元だった米 Yahooが情報開示に応じ、その結果、活動家たちは逮捕されて10年もの禁固刑に処されてしまった。この事件は大問題になり、アメリカ下院の公聴会でYahooも謝罪することになりました。彼らが恐れているのは、この失敗をくり返すことです。

 仮にいま、民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんや黄之鋒(ジョシュア・ウォン)さんのFacebookメッセンジャーのアプリ記録が開示されたら、それをもとに彼らが国家安全法違反となって罰せられる可能性がある。そんな事態となれば、Facebookは世界中から批判を受けることになる。各社が利用者情報の提供の一時停止に踏み切ったのは、そんな事態を避けたかったからです」(高口氏)

民主活動家の黄之鋒(左)氏と周庭氏 ©getty

インターネットが支えた香港民主化運動

 今回の事態が香港で特に大きな意味を持つのは、2014年の「雨傘運動」と呼ばれる民主化運動や昨年から続く一連のデモが、ネットによって支えられてきたからだ。

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「民主化運動の発端は、ネットの掲示板でした。若い世代がオンライン上で議論ややりとりを重ねて行く中で、現状への問題意識を共有し、それがオフラインの日常でのデモに拡大していったのです」(高口氏)

 デモの現場でも様々なアプリが活用されてきた。たとえば、香港の街のどこが警察に封鎖されているか分かる地図アプリが開発されて、デモ隊はiPhone片手に警察の動きを確認しながらデモを続けていた。

警察の封鎖した場所は地図アプリで容易に分かる状態だった ©AFLO

 ところが、状況は国家安全法によって一変したという。

「仮に、香港にサーバーがあるネット掲示板で香港の独立を呼びかけても、中国当局が国家安全維持公署を通じてサーバー会社に投稿者の情報開示を請求すれば、書き込んだ人は逮捕され、中国に送られかねないのです。