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 知らない場所に連れ去られてしまって、最初は不安でしかたがない。けれど、眼に映るいろんな事物(それらは鴻池が設置した作品の数々である)と向き合っているうち、この世界の流儀や歴史がすこしずつ理解できていく。すこし安心感を味わえる。ただ、そのまま安堵しているわけにもいかぬ、という気がどこかでしている。元の世界に戻れなくなってしまわぬように、という緊張感が自分の中でピンと張り詰める。

最高のイリュージョンを見せてくれる

 鴻池は今展の機会に、単に作品を並べるのではなく、私たちの知らないまったくの別世界をそこに築こうとして、みごと成功したのだ。ここを訪れた人は五感を大いに刺激され、読んだこともない神話の世界にはまり込んでいってしまう。

《皮トンビ》瀬戸内国際芸術祭 2019 展示風景
 

 アートとは主にビジュアル表現を用いて、人にイリュージョンを見せるもの。だとしたら、鴻池朋子の今展ほどの成功例もまたとない。

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 我が身をその場に運んでこそ味わえる体験をぜひ実地に。日時指定予約制での入場となるので注意のほど。