6月19日に「都道府県をまたぐ移動」の自粛が緩和された。その直後の6月下旬、私は実に3ヵ月ぶりとなる旅で、箱根の温泉旅館「ススキの原一の湯」を訪れ、“フェイスシールド越しのおもてなし”を体験した。
同館を運営する「箱根一の湯グループ」は、江戸時代から続く老舗で、現在、箱根に宿泊施設を10箇所有する。1泊2食1万円以内で泊まれる安さや、コロナ後の衛生管理対策をまとめた「一の湯クリンリネスポリシー」などで、宿泊業界内外から注目を集めている。
同館の“3密対策”を味わった翌朝、チェックアウトを済ませた私は、一の湯グループの16代目となる小川尊也社長(35歳)に、「コロナ禍での変化と戸惑い」について話を聞いた。(全2回の2回目/前編から続く)
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――この1日、“一の湯クリンリネスポリシー”を体感しました。
小川尊也社長(以下、小川) いかがでしたか? 私がお話をするよりも、むしろ宿泊された感想をお聞きしたいです。
――率直に申し上げますと……、ビニールカーテン、フェイスシールド、マスクと、厳重な感染防止対策に、最初は少し仰々しく感じたのが正直な気持ちです。ここまでしなければいけないというのは、頭では理解しているつもりなのですが。
小川 そうですか……。ただお客様のほとんどは、衛生管理が徹底されていること、3密回避対策がなされていることが良かったと満足して下さっています。
――これまでは、旅先の旅館でスタッフの方とちょっとした会話をすることも楽しみの一つだったので、仕方のないことではありますが、それができない寂しさもありました。
小川 一の湯としては、まず衛生管理基準をクリアして、そのうえでお客様に喜んでいただこうと考えているのですが、まだまだやるべきことはありますね。
再開当初は“前年度比7割減”
――今回のコロナ禍では、4月9日から全館を休業していましたね。
小川 はい。その後、6月1日から一部の施設を、19日から全館を再開しました。
――現状で、お客さんの戻りはどのくらいでしょうか?
小川 再開当初は前年度比7割減でした。その翌週は前年度比6割減で、だいたい40~45パーセント程の入りです。
――一の湯と言うと、ネーミングがユニークなプランを打ち出されている印象があります。特に、3月上旬の「まじでコロナウイルス勘弁して下さいプラン」は大きな話題になっていました。
小川 一の湯グループは今年で創業390年になります。そこで、お客様への感謝を込めて、もともと39本のユニークなプランを用意していたんです。「まじでコロナウイルス勘弁して下さいプラン」も、その中の1本です。でも、これは後からつけたサブタイトルで、本タイトルは「これこそが真の早割!5月~6月平日宿泊で1名様3900円プラン!」だったんです。ただ、この本タイトルじゃ面白くないからと、web担当者から「まじでコロナウイルス勘弁して下さいプラン」という名前が出てきたんですよ。