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抗体が感染を防ぐとは限らない! 免疫学者が指摘する「ワクチン待望論の“深刻な誤解”」

抗体が感染を防ぐとは限らない! 免疫学者が指摘する「ワクチン待望論の“深刻な誤解”」

新型コロナ感染者に「悪玉抗体」ができている可能性も

note

〈「どの程度の割合で集団免疫が達成されるか」を示すのが、「集団免疫閾値」です。(略)「感染力の強さ」は、一人の感染者が何人にうつすかを示す「基本再生産数」(Ro)によって表されます。(略)

 新型コロナの「基本再生産数」は「2.5」と推定されていて、これを公式に当てはめると、「集団免疫閾値」は「60%」となります〉

〈しかし、ここで一つ大きな誤解が生じてしまいました。外出自粛の必要性を訴える感染症の専門家が、この計算を元に、「我々はこの新型ウイルスに対して免疫を全く持っていない。したがって、6割の人がかかり、何万人、何十万人も死ぬ。だから、ヒト同士の接触は8割削減する必要がある」と言ってしまったのです。(略)

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「集団免疫閾値」の定義からすれば、間違いです。「社会の6割が免疫を獲得すれば感染は広がらない」を「社会の6割の人が感染する」と言い換えてしまったのです〉

©iStock.com

ウイルスの感染を促進する「悪玉抗体」

 宮坂氏によれば、「抗体」に関しても、さらに大きな誤解があるという。

〈「抗体」には、(1)「善玉抗体(中和抗体)」、(2)「悪玉抗体」、(3)「役無し抗体」の3つがあります。

(1)は、ウイルスを不活化し、細胞への感染を防ぐ「抗体」です。
(2)は、逆にウイルスの感染を促進し、病気を悪化させる「抗体」です。
(3)は、ウイルスを不活化することも、感染を促進することもない「抗体」です。

 要するに、ウイルスに感染してできるのは、「善玉抗体」とは限らないのです。例えば、エイズ感染でできるのは、大半は「役無し抗体」です。そのため、有効なワクチンは未だ開発されていません。

「悪玉抗体」の例としてよく知られているのは、ネコ・コロナです。米国でワクチン開発が試みられたのですが、接種した方の症状が悪化しました。「抗体」はできても「悪玉抗体」ばかりだったのです。このような現象を「抗体依存性感染増強現象(ADE)」と呼んでいます〉