霞が関の幹部人事がひと月遅れの7月14日に発表された。
注目の財務省は太田充が事務次官、矢野康治主計局長のツートップとなった。わけても太田は森友学園問題で自殺した近畿財務局職員の未亡人から国会答弁のおかしさを名指しで指摘されている上、財務省内にも知らせず官邸官僚独断のコロナ対策に奔走。官邸官僚たちに操られてきた、と省内に不満やストレスが残ったままの事務次官就任となる。
もう一つの“注目の的”経産省人事は……
内閣人事局による官邸主導の霞が関人事にあって、もう一つ注目されたのが経産省人事だ。焦点は昨年来、首相の補佐官と政務秘書官を兼務する実力者今井尚哉が事務次官に推してきた経済産業政策局の新原浩朗の次官就任なるか。
この4月に60歳になったばかりの現事務次官の安藤久佳は次官定年の62歳まで2年近く残しているが、新原に次官ポストを譲るのではないか、との観測も流れた。が、安藤は留任。新原は昨年9月に60歳を迎え、コロナ対策を理由に定年延長しており、いまだ内閣府事務次官の可能性が残っているものの、これで経産次官の目は消えたといわれる。
さらに経産省人事では、中小企業庁長官の去就も取り沙汰された。安藤の引きで昨年7月に局長を飛び越えて長官に昇進した前田泰宏は、コロナ対策の持続化給付金問題で野党やマスコミ追及の矢面に立たされた。そのため今度の人事で更迭されるのではないか、とも囁かれたが、こちらも留任が決まった。
「安倍一強」の足元が揺らいでいる
安倍晋三一強政権、虎の威を借る官邸官僚たちの我が世の春、といわれて久しい。しかし、ここへ来て、思いのままに政策や人事を操ってきた側近たちの亀裂が露わになり、政権の足元が揺らいでいる。結果、それが今度の中央官庁人事にも投影されているように感じる。
官邸ならびに霞が関の権力構造は複雑に入り組んでおり、政策の結果や評判だけを追いかけていたら、本当の姿をとらえきれない。安倍政権のPRを一手に握る電通との蜜月が問題になった中小企業や個人事業主に対する持続化給付金もそうだ。詳しくは本編(「文藝春秋」8月号「『持続化給付金』と経産省の暗闘」)に譲るが、前田は電通と結託して中小企業対策をねじ曲げてきたわけではない。