「時期がちょっと早かったかなと思う」
——舞台をやらなければよかった、後悔はありますか?
「正直なところ、結果タラレバになってしまうんですけど、『こんなことになるんだったら……』っていう気持ちはやっぱあります。公演をやってる時は、お客さんの表情や反応を見ていると、『このご時世だけど、やってよかったな』って思っていたんです。でも、結果こうなってみると『時期がちょっと早かったんじゃないかな』『様子を見てからでよかったんじゃないかな』と思います」
——同じ演劇界からも、今回の対応を「素人の集まりだ」と批判した歌舞伎俳優の尾上松緑さんをはじめ、厳しい声が上がっています。
「厳しい声の裏には、やっぱ僕らのせいで中止になった舞台もあると思うし、いろんな方々がいると思うのでご迷惑おかけしたことは本当に謝りたいです。ただ、申し訳ないとは思いますけど、演劇、歌舞伎、野球、サッカー、ライブにしても、こういうことがなくなることは絶対にないと思います。いくら対策をしても、絶対にどっかの隙間からコロナって入ってくると思う。本当にそれくらい感染力がすごいと、自分が感染して思いました。
だから、より厳しい基準やガイドラインを決めて、同じことが起きないようにしないといけない。また不安になったり苦しい思いをする人が増えないようにしてもらえたら、と思います。あとやっぱり、僕がいうのもちょっとおかしな話なんですが『今じゃないかな』っていうことを強く思っています」
——今回、主催者であるライズコミニケーションや、会場のシアターモリエールの管理体制が問題視されています。これまでどのような話をされました?
「ライズの方とは話はしています。そこは人間なんで、やっぱりみんなの安全を一番気にしていました。今、報道では『モリエールが悪いのか』『ライズが悪いのか』って色々と言っていますけど、僕からしたらそんなことどっちでもいい。それより、この先どうしていったらいいのかとか……犯人探しも大事かもしれないですけど」
夏の舞台降板で「ほっとした」
——何が失敗だったのか明確にしなければ、次に進めないのでは?
「ただやっぱり、出演者、運営者、劇場、お客さん、その一人一人がちゃんとした『コロナってこういうもんなんだよ』『すぐそこまで迫ってきてるんですよ』っていうスタンスでいないと、俺はもう無理だなって思います。やっぱり僕はどっちが悪いということより、もっと違ったところを見据えて、次に繋げることを話し合ってほしい。
舞台ができないと、オンラインでの公演とか担っていくのかもしれませんが、それはもう舞台じゃないと思います。やっぱ生で、というのが舞台の醍醐味。オンラインとかになってくると『ドラマでいいじゃん』って話になってくる。そうなるとドラマに出られる人しか食っていけなくなる話じゃないですか。それはなんか違うのかなって思うし、どうすればいいのかなって、未来が不安しかないです」
——山本さんは今後、舞台やりたいですか?
「そこが、正直なところ……。夏にやるはずだった舞台が無くなったんです。全く違う制作会社の運営で、このあと1カ月くらい稽古して、夏に本番だったんですが、僕が降板になった。動いてくれていた方に申し訳ないのですが、降りたことでホッとしたところはあります。再び何かが起きて『また山本裕典かよ』って、言われるのはきついです。
できることなら、コロナが落ち着いたらやりたいなとは思いますけど、とりあえず当分はできないです。同じことが絶対起きるんで。僕、起きないわけがないと思ってます」
山本は憔悴しきった様子で約60分間のインタビューを締め括った。
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