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藤井棋聖はAIを超えているか、否か

 しかしそんななか「藤井AI超え」にテンション高めの新聞もあった。

 7月19日の産経新聞の一面コラム「産経抄」は過去の棋士の名言や苦悩を紹介し、

《およそ合理性のみを追う人工知能(AI)に、このセリフは言えまい。》

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《盤上を流れる哀歓苦楽の時間も、AIの理解できぬ世界だろう。》

 と感無量ぽい。AIを相手に勝手にがっぷり四つを組んでいる感じだ。おじさんからすればAIにはやはり警戒感があるのだろうか。

提供:日本将棋連盟

 ちなみにその日の日経新聞の一面は「新常態『その仕事、AIで』」。

 新型コロナウイルス対策で人との接触を減らすためにも、AIで業務の自動化の機運は高まるという。産経と日経のAIネタのギャップが凄かった。

各新聞社は「棋戦」を主催

 では最後に「将棋と新聞」について。新聞社にとって将棋は優良コンテンツなのである。

 各新聞社はそれぞれ主催する「棋戦」(将棋の大会)がある。たとえば朝日と毎日は名人戦を共催、読売は竜王戦、日経は王座戦、産経は棋聖戦などなど。実はしんぶん赤旗も新人王戦を主催している。そう考えると産経が今回の棋聖戦で感無量になる理由もわかる。

棋聖戦五番勝負で1勝3敗となり、タイトルを失った渡辺明二冠 代表撮影

 各紙は自分の主催する大会の「棋譜」(対局の記録)を載せる。将棋に興味のある人はその新聞を読む。

 3年前に私がTBSラジオ「荻上チキ Session-22」の「新聞をヨム日 イマドキの新聞の読み方」(2017年4月6日)という回に出演したときのことだ。

 憲法学者で将棋にも詳しい木村草太氏によると、昔のプロ棋士は新聞は全紙とる人もいたという。各紙の棋譜を読みたいからだ。

 でも新聞配達の人からすれば「産経も赤旗も購読していて、この人はどういう人なんだろう」。

 たまらないエピソードである。こういう話を聞くと将棋だけでなく新聞業界にとっても藤井聡太の出現は大きいことがあらためてわかる。

代表撮影

 というわけで今回は藤井棋聖読み比べをお届けしました。

 7月19日は藤井棋聖18歳のお誕生日でもありました。いろいろおめでとうございます。