北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長が、目に見えて公開活動を減らしている。韓国の有力紙「中央日報」の独自集計によると、過去100日間に正恩が北朝鮮の国営メディアに登場したのはわずか33回にすぎなかった。うち20件は外国の指導者に祝電を送るという形式的なものだった。熱心に行っていた経済関連施設の視察は、ほとんど部下に任せている。
今春には正恩が20日間姿を見せず、手術説、死亡説まで飛び交ったこともある。その後も長期間動静が伝えられないことがたびたび起きている。過度な喫煙、飲酒に加え、体重約130kgとみられる肥満体の正恩には、健康不安説が今もくすぶっている。
その代わり事実上のナンバー2として存在感を示しているのが、正恩の実妹、金与正(キムヨジョン)・朝鮮労働党第一副部長だ。まだ30代前半だが、外交の責任者になっている。
「平和の使者」はなぜ「毒舌姫」に変身したのか?
6月には、韓国側から飛ばされた体制批判のビラに反発、韓国を口汚い言葉で罵った。そして、南北融和の象徴として韓国が北朝鮮側に建設した「南北共同連絡事務所」の爆破を指示。さらなる軍事行動も示唆した。
与正は7月に入って、「米朝首脳会談は現時点では米国に有益なだけだ」と談話を発表した。条件次第では会談に応じるともとれる内容だった。対米関係でここまで思い切ったことを言えるのは与正しかいない。
そもそも与正は2018年、韓国で開かれた平昌冬季五輪に北朝鮮の代表として参加した。「平和の使者」とも呼ばれていた彼女は、どうして「毒舌姫」に変身したのか。
その理由は、やはり兄、正恩にあるようだ。彼は国政に対する自信を失い、表に出たがらなくなっているという。