プロ野球選手にとって、グラブは“相棒”と表現されることがある。
特にこだわりが強い選手として知られるのが、昨年3月に現役引退したイチローだ。グラブの皮を極限まで薄くし、操作性を追求した。
巨人の坂本勇人は「硬いほうが捕りやすい」という理由で、夏場の試合中、攻撃の間は冷蔵庫や冷凍庫で保管しているという。西武の名手・源田壮亮は手のひらの丸みとグラブの形状がちょうどフィットする「素手感覚」を求め、自然な捕球感を得られるように職人がこだわりの一品に仕上げた。
神は細部に宿る――。
オーダーメイドされるプロ野球選手のグラブには匠の技が凝縮されており、名手たちの左手には特別なグラブがはめられているのだ。
一方、西武のセカンドを守って2年目になる外崎修汰は、もともとグラブへのこだわりが強かったわけではない。アメアスポーツジャパン株式会社のウイルソンチームスポーツ営業部長で、2017年末から外崎を担当する中村光彦さんはこう語る。
「グラブのうんちくを語れるほどの詳しさはそんなになく、『つかみたい』とか、『大き目がいい』くらいしか言わない人です」
「コユニ」をはめ、UZRは全選手トップ
ウイルソンはアメリカのメーカーで、シングルハンドキャッチに特化した「デュアル・ウェルティング」と言われる縫製法に特徴がある。内野守備に課題を抱えていた外崎はプロ入り後に“復縁”し、セカンドに固定された2019年から守備で華麗なグラブさばきやフットワークを発揮するようになったのは前編「守備成長の影に……西武・外崎修汰、“魔法のグラブ”の秘密に追る」で述べたとおりだ。
二塁のレギュラーとなって2年目の今季、外崎の守備はさらに進化している。守備の評価指標であるUZRを見ると、7月27日時点で12球団の全選手のうちトップの7.8を記録しているのだ(UZRは同ポジションを守る選手の守備力を比較する際、平均的な守備能力の選手と比べて失点をどれだけ防いだかを表す。上記の数値はDELTA社が発表)。
そんな外崎は今年、グラブを一新した。新たに左手にはめられているのは、通称「コユニ」と言われるモデルだ。