文春オンライン

誰とも似ていない人・金子弌大の歩く道

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/08/01
note

かつての大エースが敗戦処理になり下がったなどというのではない

 ところが、次の5回表から少しずつ点が入り始めます。彼は毎回1人ずつランナーは出すものの、ピンチを招いたというほどのこともなく3イニングを無失点で抑え、その間に3点差まで縮めて迎えた7回表、まさかまさかの一挙6点というビッグイニング。逆転です。リードです。こうなればあとはもう、追いつかれずに宮西尚生と秋吉亮につなげばいいだけ。最終的に9-7でファイターズが勝ちました。勝利投手金子弌大です。

《極端に言えば0勝0敗で、目立たなくていい》と本人は言うのですが(前述朝日新聞記事)、この試合の勝ち星は、たまたまそのイニングに彼が投げていたからというだけのことにとどまりません。実際に、彼の好投があったからこその大逆転だったと思うのです。

 夜の「プロ野球ニュース」では、大矢明彦さんや大久保博元さんが口々に彼を称えていましたが、「こんな場面で出てくる投手じゃないのに」ともこれまた異口同音に言うんですね。うん、それはそう見えるのは仕方がない。大先輩達の目には特に。

ADVERTISEMENT

 でも、たとえ外側からはどう映ったとしても、かつての大エースが敗戦処理になり下がったなどというのではないんです。

 4日後、7月29日の札幌ドーム。珍しくリードしての登板となりました。4点差をつけての9回表、セーブ機会ではなく、前日もこういう状況で投げていた秋吉亮をちょっと使いにくい場面です。セーブもホールドも勝ち星もつかない、けれどもセーフティーリードとも言えないその最終回を、金子弌大は4日前と同じように、ランナー1人出したぐらいで動じることは全くなく、落ち着いて抑えてみせました。

 全ての登板に意味がある。

 ブルペンにいる若い子達に、その姿を示し続けて下さい、弌大さん。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/39231 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

誰とも似ていない人・金子弌大の歩く道

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー
文春野球学校開講!