昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/07/26

 石井はその後コンビを解散し、現在では俳優業を中心に活動している。この時期から少しずつドラマで芸人を起用する動きが活発になっていった。

 なぜ芸人が俳優としてそれほど重宝されるのか。起用する側の心理を紐解いてみると、そもそも芸人は演技が上手いから、ということが真っ先に挙げられる。

元「アリtoキリギリス」の石井正則 ©文藝春秋

コントでは「脚本・演出」も兼ねている

 芸人は普段からコントで役柄を演じている。コントでは、普通の芝居よりも短い尺で状況や心理を伝えなくてはいけないし、もちろん笑いも起こさなくてはいけない。

 コントとは演劇の時間をギュッと凝縮したようなものだ。そこには特別な表現力が求められる。だからこそ、コントができる芸人は演技も上手い人が多い。

 また、芸人の多くは自分たちでネタを考えている。これは芝居の世界で言えば、演じ手と脚本と演出を兼ねているようなものだ。芸人は脚本を書いたり演出をしたりする側の心理も知り尽くしている。だから、俳優として自分がそこに合わせることにも抵抗がない。

『戦場のメリークリスマス』への出演でも話題になったビートたけし ©文藝春秋

若手俳優にはない“幅の広さ”

 芸人は演じられる役柄の幅が広いというのもメリットだ。今どきの人気のある若手俳優は美男美女ばかりで、脇を固めるコメディリリーフ的な存在や個性の強い役柄を演じられる人材が慢性的に不足している。また、芸人であれば年齢や性別の幅も広く、さまざまな役柄に合った人材が豊富に揃っている。

 芸人の俳優とひとくちに言っても、本職さながらの演技を見せる「本格派」もいれば、芸人としての個性がそのまま魅力になっている人もいる。