歴代2位となる366万票――圧勝して2期目に入った小池百合子都知事だが、いきなり“危機”に直面している。7月26日時点で、東京都の新型コロナウイルス新規感染者は6日連続で200人超え、その手腕が問われている。

「夜の街」「東京アラート」といったフレーズを繰り返し、フリップを使って分かりやすくアピールする。そんなイメージの強い小池氏だが、政治家としての本質はどこにあるのか。2016年の初当選から4年間、小池氏をつぶさに観察し続けた週刊文春記者がまとめた『小池百合子 権力に憑かれた女』(光文社新書)から解説する。(全3回の1回目/#2#3へ)

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なぜショートヘアなのか

 小池百合子がショートヘアであるのは、毎朝5分程度でセットできるという理由からだそうだ。

 カットはキャスター時代から、銀座にサロンを構える谷口愛子に頼んでいる。2009年衆院選で自民党が野党に転落した際、小池は政権を奪還するまで髪を伸ばすと宣言。こうしたイベント作りはお手の物だが、さらに「臥薪嘗胆ヘア」と命名し、2012年12月、自民党が与党に返り咲くと、力士の断髪式の要領で支援者が次々と鋏を入れるイベントも行っている。最後に髪を整えたのは谷口愛子だった。

1993年、衆院選兵庫2区からの立候補を表明する小池百合子氏。当時は今よりも髪が長かった ©共同通信社

 都議選イヤーとなる2017年の年明け、小池はそのショートヘアをさらに短くしてきた。選挙への気合を漲らせたわけだが、図らずも1月6日、「臥薪嘗胆」を口にする。

「7月まで一滴もお酒を飲まないことにしました」

 都庁に隣接する京王プラザホテルで開かれた公明党東京都本部の賀詞交換会に招かれた小池は、乾杯の音頭を終えたのを見計らうように登場した。

「乾杯が終わっていてよかった。というのも私、7月まで一滴もお酒を飲まないことにしました。戦いを前に、臥薪嘗胆ということです」

 東京都議選を前にしての断酒宣言であった。ワイドショー向けニュースとしては打ってつけで、都議選の盛り上げに一役買った。

2017年、都議選を控えて髪を短くした(2月撮影) ©文藝春秋

 実は小池はさほど酒を飲まないから、断酒宣言など苦ではないはずだ。その日の定例会見でも自らの酒量を「のり弁でお答えさせていただきます」と煙に巻いている。かつて市場移転に関する情報開示文書のほとんどが黒塗りだったことを、あたかも「のり弁」のようだと小池は揶揄したが、それに掛けた答えであった。

「お酒はたしなむ程度で、ビール1杯、ワイン1杯くらいです。かつても酒豪というわけではありませんでしたが、06年3月、環境大臣時代に肺炎で救急車で運ばれ、生死の境をさまよったことがある。事務所は葬式の心配をしたほどです。それ以降、健康に気をつけて酒を控えているようです」(古い知人)

 こうしたアイデア勝負では力を発揮する小池だが、都知事としての権力を行使し、都のカネを使うとなるとどうも空回りする。

“ピコ太郎動画”は制作費2000万円

 2017年5月、小池は都のホームページの動画に、PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)のパフォーマンスで“世界的アーティスト”に躍り出たピコ太郎とともに登場した。

「♪I have a 電球 I have a 電球 oh LED電球」