歴代2位となる366万票――圧勝して2期目に入った小池百合子都知事だが、いきなり“危機”に直面している。7月26日時点で、東京都の新型コロナウイルス新規感染者は6日連続で200人超え、その手腕が問われている。
「夜の街」「東京アラート」といったフレーズを繰り返し、フリップを使って分かりやすくアピールする。そんなイメージの強い小池氏だが、政治家としての本質はどこにあるのか。2016年の初当選から4年間、小池氏をつぶさに観察し続けた週刊文春記者がまとめた『小池百合子 権力に憑かれた女』(光文社新書)から解説する。(全3回の2回目/#1、#3へ)
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ヨークシャーテリアの愛犬「そう」ちゃん
“風圧”のある政治家が少なくなった、といわれる。
対峙すると気圧されるような雰囲気を持つ政治家のことで、ベテラン記者が例に出すのは田中角栄や竹下登といった人たちだ。今の政治家を見回した時、都知事という大看板もあるにせよ、小池は“風圧”のある政治家の最右翼といえる。記者との関係に阿吽の呼吸などない。『小池百合子 権力に憑かれた女』の第1章で小池が会見で記者を選別することを指摘したが、それは会見場の空気を支配していることでもあった。
その凄みは、家族のない孤独感から来ていると私は思っている。
政治家は、選挙や政治活動で、配偶者や親や子を“活用”する。妻にはマイクを握らせないと強がる政治家でも、陰で妻は選挙の手伝いをしているものだ。妻に政治活動はさせないと語る小泉進次郎にしても、親族を環境大臣秘書官に据えた。
しかし独身の小池の場合、両親はすでに他界。海外を飛び回って日本を不在にしがちの兄やその家族が政治に関わることはない。
小池の住む「エコだハウス」には、お手伝いさんがいるとはいえ、会話の相手はヨークシャーテリアの愛犬「そう」ちゃんである。名前の由来は「総理」で、権力志向を隠そうともしない。たしかに毎夜、権謀術数をめぐらせる相手としては適任だろう。
「結婚したけどさっさと別れちゃった」
ロケットスタートを切っていた16年12月、小池がふと自身の生い立ちを語ったことがある。「WOMAN EXPO TOKYO」(日経新聞など主催)のトークショーでのことだ。「百合子グリーン」を身に着けた熱烈な女性ファンが最前列に陣取り、イベントが始まった14年以降で最も盛況だったという場で、小池は自らの離婚歴に触れている。
「途中で結婚したんですけど仕事の方が面白くってさっさと別れちゃった」
「子どもがほしい時期もありましたが、仕事が面白すぎちゃって。皆さん遅すぎないうちに、家族は大切にした方がいいと思いますよ」
小池はカイロ大留学中に日本人と結婚、1年ほどで別れたことは第2章でも触れた。「仕事の方が面白くて」は事実と異なるが、「さっさと別れた」のは本心だろう。