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「私は母になれなかったので……」

 子どもができなかったのも「仕事」以外の理由ではなかろうか。小池は45歳の時、子宮筋腫で子宮全摘手術を受けている。

 イベントの趣旨に合わせ、軽いタッチで「仕事」としたのは、かえって肉体的、心理的な苦しみを物語っているように思える。

「私は『非常に傷ついた』ということを申し上げたい」

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 2018年11月16日の記者会見で、税の偏在是正について記者に問われた際、小池は突然そう話し始めた。9日の全国知事会で、鳥取県の平井伸治知事は、小池がハロウィーンイベントで『銀河鉄道999』のキャラクター・メーテルのコスプレをしたことに触れ、「メーテルの名前の語源はギリシャ語で母。ぜひ母の慈愛の心を持って、大都市と地方の折り合える案を考えていただければ」と述べた。平井は総務官僚出身ながら、鳥取県を「蟹取県」と命名してPRするなど“お調子者”の一面があり、発言に悪気はなかったろう。

 だが、小池の声は珍しく震えていた。

「私は母になれなかったので、できるだけ多くの女性には仕事も、それから子育てもやってもらえるような環境を、私自身ができなかったことを皆さんに是非叶えてもらいたいと思うから、そういう環境づくりをしている」

「大年増で厚化粧の女」と揶揄されて

東京都と調布市の合同総合防災訓練(2017年9月撮影) ©文藝春秋

 都知事選で石原慎太郎から「大年増で厚化粧の女」と揶揄された小池は、「子どもの頃からアザがあった」と切り返したことで同情票を一気に集めることに成功した。この会見も、それに似た戦略だとして“あざとい”と見る向きもあった。ただ私は、本心から出た言葉だと思っている。

「小池さんは大病の後、それまで以上に、政治にのめり込んでいきました」

 小池の古い知人は、こう述懐する。

“肉食系”でなければ務まらない政治の世界にあって、小池には男の影がほぼ見えない。週刊誌メディアならずとも注視してきたのだが、どうにもキャッチできなかった。

 いわば小池は、権力に嫁いだといえるのかもしれない。