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まさかの三軍行き、“誤解されやすい男”巨人・澤村拓一の復活はあるのか

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/08/18
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澤村の人柄の一端が見えた出来事

 そして、こうしたこだわりの強さによって、自我が強く、人の言うことに耳を傾けないタイプだと決めつけられている傾向もあるように感じる。もちろんそういう部分もあるのかもしれないが、僕の中では、澤村が自分にしか興味のない頑固者だというイメージはない。

 例えばこんなことがあった。ジャイアンツ球場での練習後、先発を控えていた澤村を数人の記者で囲んだときのことだ。澤村は番記者の中の1人が左手薬指に指輪をはめているのを見て「あれ? 結婚されてるんですか? 子どももいらっしゃる?」などと尋ねていたのだ。「いや、めっちゃ普通の会話じゃん」と思われる方もいるかもしれない。ただ、会食の場などは別として、プロ野球選手が公の場で記者のプライベートに興味を持って何かを聞いてくる、みたいなことは意外と珍しい。もちろん大した出来事ではないのだが、「あ、人に興味あるタイプなんだ」と澤村の人柄の一端が見えたような気がしたものだ。

 交流戦で北海道に行ったときも地元放送局のインタビューを受けた後、初対面のアナウンサーに「エフファイブ(※北海道テレビ放送で放映されているファイターズ応援番組)いつも見てますよ!」と気さくに声をかけていた(ちなみに相手の返答は「あ、それは他局さんのやつですね」であった)。少し天然な部分はありつつも、素直で気遣いのできる一面も持っている人間なのだ。

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素直で気遣いのできる一面も持っている人間なのだ ©文藝春秋

 ピッチングも人間性も決して洗練されているとは言えないかもしれないが、なんとも言えぬ魅力がある。それが澤村だ。だからこそこのまま終わってほしくない。原監督も阿部2軍監督も、這い上がれると思っているからこそ崖から突き落としているに違いない(多分)。きっとチャンスはあるはずだ。

 かつて、打たれた後の喜怒哀楽が激しかった澤村をエースの内海がこう諭したという。

「打たれて、その悔しさを家に持ち帰るのは構わないし、むしろ積極的にやるべきだけど、次にグラウンドに来る時には、普通の顔をして来い」

 だから今こそ言いたい。澤村よ、普通の顔(=あのふてぶてしい顔)で戻ってこい、と。

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