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ライアン小川のノーヒットノーランを、他のノー・ノーと一緒にしてはいけない理由

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/08/26
note

 ビジターでは相手の応援の方が大きいのが当たり前なので、今の状況でも違和感はあまりないし、むしろビジター有利な部分もあるかもしれませんが、ホームとなれば別。

 スワローズのここまでの神宮での成績は14勝18敗1分(8/25現在)。タイガースに20点取られたり、ドラゴンズに11点取られたり、ジャイアンツに12点取られたり。

 これら全部が神宮での試合なんですが、球場が狭いという理由だけではないと思うんです。じゃあ、神宮でも東京ドームのように大音量で応援歌やチャンステーマを流せばいいのかというと、これがまた難しい。

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「ちょっと! 急に音ガンガン流れてますけど!」という違和感が選手の中に生まれてしまう(笑)。

小川泰弘のノーヒットノーランは他と違う

 結局何が言いたいのかというと、そんなモチベーションの維持が難しい、違和感のあるシーズンにノーヒットノーランを達成した小川泰弘はとんでもないメンタルの持ち主だと言うこと。

 これ、落語で例えると「キャパ1000人の会場に100人しか入っていない状況の中【時うどん】で会場が揺れるぐらいの大爆笑をとる」ぐらいの快挙ですよ。

 先日無観客の中【時うどん】をやり、一生懸命うどんを食べているのに全く反応がないという違和感がすごすぎて、途中で心が折れそうになった僕とは大違い。

 他のノーヒットノーランと一緒にしないでいただきたい。

 身長は171センチと小柄ながらノーラン・ライアンばりに足をあげる投法でルーキーイヤーに16勝を挙げ、菅野智之を抑えてその年の新人王にも輝いた、スワローズが誇る小さな大投手。創価大学3年生時、東京新大学野球・秋のリーグ戦の防御率は驚異の0.12。その秋以降は無傷の21連勝。

 そんなバケモノ投手が去年、自己ワーストの5勝(12敗)しかできなかったこと。この経験が彼のもともと強かったメンタルをより強くしたのかもしれません。

小川泰弘

 今季途中から始めた【投球前にユニフォームを引っ張ってベルト付近にセットしたグラブの上にのせる】というあの動作。あのひと工夫が何らかのカギを握っていたような気もしてなりません。

 23日のタイガース戦では清水昇投手も同じような動作をしていましたね。それこそ個人的に球団の関係者の方にあの動作の理由をお聞きしようと思えばできたんですが、「おれは球団とも繋がってるから裏情報いっぱい持ってますねん!」的なコラムは書きたくないので、そういう情報は本業にされている記者さんや球団内部の方から出てくるのを待ちましょう。

 この「違和感」を力に変えて突き進む今年のライアンは、絶対に最多勝を取ります。

 僕もライアンのメンタルを見習って「無観客でも心折れない時うどんのやり方」を模索したいと思います(笑)。

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