文春オンライン

佐々岡真司の“変化”を見たい――マンウィズから監督に伝えたいこと

文春野球コラム ペナントレース2020

note

単なる太ったおっさんじゃないのよ

 佐々岡真司監督は現役時代は投手。1989年にドラフト1位で広島入り。プロ1年目初登板で初勝利、でその年には17試合連続セーブをかますという怪物っぷり。91年には先発で活躍し17勝(!)。シーズンを通して大活躍、シーズンMVP、沢村賞、ベストナインに選出される。確かこの年には30イニング連続無失点の大記録を打ち立てている。91年、92年と2桁勝利をあげるが、翌年にはなんと17敗を記録、これは確か未だ破られていない(笑)。

 その後ストッパーに転向。ストレートと特にカーブを武器に96年には自己最多の23セーブ。なんと言っても99年には新たな球種(シュート)を武器に91年に次ぐ15勝でリーグトップの13完投、5完封! ノーヒットノーランも達成。06年には100勝だけでなく100セーブを記録し江夏豊以来史上2人目。07年に引退するまでに輝かしい成績を収めた大投手である。現役引退後は野球解説者などを経て14年には2軍投手コーチ、19年には1軍投手コーチ、そして今季は監督に。

 選手としてもさることながら人物像も素晴らしいとのお話。コーチ時代も選手が良い成績を収めれば選手本人を褒め称え自分の手柄である素振りは見せない。なんと言っても印象深いのは引退試合のエピソードである。引退表明をした試合、バッターは村田修一。引退試合ともなると大抵は引退投手に華を持たせるように空振り三振をするのが暗黙の了解だが、広島側も佐々岡も「真剣勝負を望んでいる、フルスイング、打ってもらっても構わない」との言。結果村田はホームランをぶちかました(笑)。引退試合でホームランをくらったのは後にも先にも佐々岡だけなのではないのか。しかしその時も村田に対し「真剣勝負。打たれて吹っ切れたし、気持ち良かった」とコメントしたそうだ。いやはや、清々しい。

ADVERTISEMENT

佐々岡真司監督

勝負するために変化を

 と言った佐々岡監督ですが、現在成績不振もあいまって世間には中々の言われようである。スポーツは勝負事でありプロ野球ともなると当然結果を求められるのですが、んー頑張って欲しい! 中には「人が良すぎるのではないか?」「時には厳しくないと指揮官としては失格」と言う声もちらほらあるが、個人的にはそこは問題ないような気がする。締めるところは締めれば、厳しくするも柔らかく当たるもそれは個人の指導のスタイルを押し通していただきたい。イイ人でも立派な指揮官は大勢いるハズ。

 投打が噛み合っていない、采配に疑問も、などもあるがこればっかりはね、采配という名の信念の我を押し通す事と結果とのバランスが噛み合うしかない。こればかりは当たればみんな拍手喝采で外れれば罵倒という世知辛いがわかりやすい反応、いにしえより未来永劫変わらないであろう人間の性です。

 ただ1点だけ、ファンとしてこれから見せていただきたいのは監督も含めたチーム全体の対応力と変化である。日程の半分近くを消化して、噛み合っていなかったのはなんだったのか、問題点は何なのか、これは応援している我々以上に選手達と監督陣が痛感しているハズ。自身のスタイル、戦術の我を通す信念は当然守って然るべきだが、「通じていない」現状を打破するための対応力と変化を厭わない柔軟性は見せて欲しい物だ。それは妥協ではなくチャレンジ。今現在日本が、世界が直面している問題さながらである。

 生き残るために、変化を。現役の佐々岡さんは真っ直ぐも凄かったが特にスライダーを武器に大活躍。ストッパーに転向した際にはカーブが輝き、さらにはシュートを習得して、と時期時期で自身のために、ひいてはチームのために変化を見事にしてのけたのではないか、と私は勝手ながら思うのであります。そのチャレンジをした上での勝負を、監督となった今でも是非! 見せて欲しい。チャレンジをした上で負けたのであれば、村田に打たれた時のように「気持ち良かった」と言ってのければ良いのです。応援してますよ、佐々岡監督!

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/39289 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

佐々岡真司の“変化”を見たい――マンウィズから監督に伝えたいこと

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー
文春野球学校開講!

文春野球コラム

広島東洋カープの記事一覧