浪曲の木馬亭から200メートルほど離れたところに、東洋館がある。漫才師の主戦場だ。漫才師のなかで、特に寄席での出番を大切にしているのが、ナイツの塙宣之と土屋伸之のふたりだ。

 メディアでも売れっ子のふたりだが、東洋館や浅草演芸ホール、そして新宿末廣亭などで直にふたりの漫才が聞けるのは貴重な機会だ。

笑いには転化しづらいコロナウイルスもネタに

 今回のコロナウイルス禍では、芸能そのものが活躍の舞台を失ってしまったが、漫才についていえば、他の芸能とは少し様子が違うと塙が話す。

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「漫才はどんな状況下であっても、出来ないことはないんです。たとえば、テレビではアクリル板を挟んでやりましたし、寄席でもハンドマイクを使ってソーシャルディスタンスを確保すれば、その条件での最大限のパフォーマンスは出来るんですよ」

7月3日、新宿末廣亭にて ©榎本麻美/文藝春秋

 どんな場所でも漫才ができる「耐性」というべきか、逞しさがあると土屋も話す。

「漫才の営業だと、いろいろな場所でやりますからね。居酒屋たけちゃんなんてところもあったなあ」

 ナイツは時事ネタを扱うだけに、今回のコロナウイルス禍はネタにも大きな影響を与えそうだ。笑いには転化しづらいと思えるが、そんなことはないと塙は胸を張る。

「今年は、コロナネタしかないでしょう(笑)。自粛期間中はみなさん不倫も控えていたようですから、そんなネタもなくて。あ、アンジャッシュの渡部(建)さんは別か……。でも、みなさんに共感していただけるネタというと、やっぱりコロナなんですよ。全員が苦労したという意味で、理解していただきやすい面もあるんです」