サンドウィッチマンのV2、和牛の躍進などが話題となった2019年の「好きな芸人」「嫌いな芸人」ランキング。果たして芸人本人たちは、このランキングをどのようにみているのか。M-1グランプリの審査員を務め、芸人たちを徹底解剖した著書『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(集英社新書)がベストセラーになっている人気漫才コンビ「ナイツ」の塙宣之氏に聞いた。
サンドウィッチマンは全部持っている芸人
――今年の「好きな芸人」ランキングで、ナイツは順位を2つ上げて8位でした。
善戦していますよね。だって、サンドウィッチマンさんが上位なのは東北の組織票ですよね? それに“お笑いビッグ3”、ダウンタウンさんはもはや殿堂入りでしょう。和牛は女性票、有吉(弘行)さんは広島票。そう考えると……ナイツは、千鳥に次いで実質2位ですね(笑)。ランキングは、気にしないようにはしていますけど、そうは言ってもやはり気になりますよ。こうやって気にしながら一生が終わるんでしょうね。
でも、このくらいの順位が一番良いと思っています。横綱になってしまうと一発やられたら引退でしょう。僕は、小結、関脇を長いことやっていた嘉風のように、名力士のポジションで給料を安定させていきたい。で、年寄株が空いたときに引退して、寄席芸人として終わるみたいな。永遠に優勝せずに、上位キラーとして生きたいです。
――「好きな芸人」部門では、サンドウィッチマンがV2を達成しました。
やはりすごいですね。彼らはネタが面白いだけでなく、それを超えて圧倒的な人気がある。それは、芸人としての「強さ」と「弱さ」を兼ね備えているからではないでしょうか。
「強さ」でいえば、東日本大震災で被災した地元・宮城の復興に向けてリーダーシップを取ってくれているイメージ。さらに漫才の中の話でいえば、伊達(みきお)さんの言葉の圧力、ツッコミの鋭さにはパワーを感じます。そういうところは男臭いし、当然ながら男受けもする。一方で、「弱さ」というか、かわい気があるところに女性が惹かれる。丸々としたフォルムもそうですが、性格が優しいところ、ぬいぐるみ好きのキャラクターも定着していますよね。それでいて、見た目は厳ついのも、またいい。
さらに、出川(哲朗)さんが10位に入っていることにも繋がりますが、サンドウィッチマンさんも「偉そう」じゃない。昔と違って、ちょっとでも偉そうだとダメなんですよ。僕の勝手な印象ですが、芸人にも「こいつ馬鹿だなあ」って上から見られたい感覚があると思うんですよね。芸人だけでなく、YouTuberなんかもそうですが、「こいつ馬鹿だな」「こいつダメだな」というところが人気の原点になっている。それでお客さんと芸人が一つになって生まれる、ある種の共感がある。自分の弱点をさらけ出している人の方が強い時代なんです。
僕個人としては、サンドウィッチマンさんの「好感度を下げようキャンペーン」をやってるんです。彼らのスキャンダルを待ってます(笑)。できるだけ嫌われる話を広めようと思っているんです。あ! そういえばこの前、(サンドウィッチマンのレギュラー番組である)NHK「サンドのお風呂いただきます」のロケで、NHKが予約してくれたホテルが狭すぎると文句を言ってました(笑)。ずっと好感度が下がるネタを探しているんですが、それくらいしかないんですよ。