さんまさんの話芸は「現代の立体的な落語」
――明石家さんまさんは、「好きな芸人」では総合2位ですが、なぜか10代からの「好き」票はゼロでした。
さんまさんのすごさが分からないんでしょうね。司会者のように感じている若者もいるのかもしれません。でも、さんまさんがひな壇に回ったら、ずっとボケ倒して、今でも誰も勝てないと思うんです。「笑っていいとも!」(フジテレビ系)の最終回(2014年3月31日)も、さんまさんは途中で口にガムテープを貼られていたじゃないですか。ずっとしゃべっていて(笑)。
さんまさんがテレビでやられているのは、女優やアイドルの、言ってみればそこまで面白くない話を全て拾って落としていく「話芸」だと思います。落語家さんの中には、さんまさんが「落語をしていない」って言う人がいるけど、「話芸」という意味では、さんまさんが誰よりもレベルが高い。どんなことでも、どこかに落とす。現代の立体的な落語を毎日見せてもらっている感じがします。
――今年のランキングでは、ベテランの中川家が昨年の22位から12位まで、大きく順位をあげました。
中川家さんは、力士でいえば遠藤。相撲の番付と同じで、地力がある人たちは結局上に来るんですよ。今までが、何でこんなに順位が低かったのかが分からないですね。中川家さんは、僕らは今でも参考にしています。ネタの内容というよりは、自分たちが楽しそうにやることや、手綱の引き方、引かれ方が勉強になるんです。
たとえば、僕らは仮に20分の時間を与えられたら、20分のネタを考えないといけないと思っていた。それをアドリブで崩したりはしなかったし、よくないことだと思っていた。でも、中川家さんの漫才をみていると、15分のネタを20分にできる。楽しそうに会話をしながらアドリブで調整するのですが、ネタとしてアドリブっぽく見せることもあるから、お客さんはどっちとも分からず、ただ絶対にウケている。「ナイツにこれから求められるのは、これだ」と思って、実際にアドリブを入れるようになった。そうやって芸人が楽しんでないと、お客さんも楽しめないわけです。
僕らが所属している漫才協会の師匠って、ある意味すごいんですけど、アドリブをやり始めて漫才が訳分かんなくなっちゃう人と、逆にアドリブを全くやらないのでロボットみたいに漫才をやる人がいて(笑)、ちょうど良い教材がなかった。漫才協会のおぼん・こぼん師匠なんて、ネタ合わせをしなさすぎて、アドリブばかりで最後はケンカして、2人で不機嫌になって終わるパターン(笑)。そこに現れたのが中川家さんなんです。