霜降り明星のここが好き
――「好きな芸人」部門では、若手の中でも和牛が、昨年の16位から4位まで順位を上げました。
M-1で3年連続決勝2位の若手が評価されたのは、審査員としても嬉しいことは嬉しいですけど、ネタの評価に加えて、やっぱり女性受けがよさそうな川西(賢志郎)君の票があるんじゃないですかね(笑)。
え、和牛は女性票が8割もあるんですか? やっぱりそうですか。女性のみのランキングでは2位ですもんね。川西君のツッコミは品があって爽やか。「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)など情報番組にも出てるから、主婦にも刺さっている。漫才の面白い人たちだと定着したんでしょうね。
若手の中でも、霜降り明星(13位)、EXIT(18位)が昨年のランク外から上位に入ったのは納得できます。どちらも「いい人」ですから。特に、僕は霜降り明星の人柄が好きなんですよ。それでいて、2人とも個性が強い。そもそも名前が覚えやすいじゃないですか、せいやと粗品って(笑)。
霜降り明星には、サンドウィッチマンさんと同じような「強さ」を感じます。若いけど、いろいろ経験値がある顔をしていて、若手なのにレベルが高いんですよ。高校生の時からお笑いをやっていて、ピンでも活躍していた。だから舞台に立っても、地肩が強いというか、物怖じしないのが見ていて分かる。言葉の強さもある。
芸人には、その強さが生む“圧力”って結構大事だと思うんです。舞台に立っていると、お客さんは気候と同じで、毎日調子が違うんですよ。晴れているときもあれば、ドンヨリしている日もある。晴れているときは何をやっても受けるから、こっちの気圧とお客さんの気圧のバランスが大事。ドンヨリしているときは、芸人がワーッと前に出ると、さらにドンヨリすることもある。
以前、M-1本番前のトイレで、鉢合わせした島田紳助さんに「漫才は三角形が理想」と言われたことがありますが、漫才って、ボケとツッコミという舞台側だけでなく、お客さんの空気も大事で、その三角形のバランスが難しいんですよ。でも、霜降り明星は圧力が強いので、例えば昨年のM-1の舞台でも、ちょっと空気が重かったのに吹き飛んだじゃないですか。あの「強さ」はすごいと思いましたね。
――霜降り明星は、今後も伸びていくでしょうか。
伸びないでしょうね(笑)。別に後輩を潰そうとしているわけじゃないですよ。少なくとも漫才はもう頭打ちです。今あれだけ面白いのに、これ以上のパターンを作るのって大変なんですよ。だから、昨年でM-1を取らなくてはいけなかったし、優勝したんです。