7月29日、岩手県内で初めて新型コロナウィルスの感染が確認された。岩手県は日本で最初に感染が確認された1月28日から「感染者ゼロ」を維持し続けていた。4月10日に鳥取県で感染者が確認されてからは、全国で唯一の“感染者ゼロ県”だった。

 感染確認を受けて29日夜、達増拓也知事と盛岡市の谷藤裕明市長が会見を開いた。感染が確認されたのは県内に住む30代と40代の男性2人だ。

 1人は盛岡市の40代男性で、7月22〜26日に関東地方のキャンプ場に滞在していた。同じテントに宿泊した友人1人が陽性と判明したためPCR検査を受けたところ、感染がわかった。男性は自家用車で移動し、帰宅途中に3カ所のサービスエリアに立ち寄り、県内のスーパーにも立ち寄っているが、そこでの濃厚接触はなかったという。男性は27日と28日にマスクを着けて職場に出勤していたため、同僚5人から6人が濃厚接触者に当たるとして、PCR検査を行う予定だ。

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 30代男性は宮古市在住で今後、行動歴について調査するという。

 達増知事は「誰でも感染の可能性がある。県民は引き続き冷静に感染症対策をしてほしい」と呼びかけた。

 「文春オンライン」は、政府の観光支援策「Go Toトラベル」事業の開始直前、岩手県の宿泊施設に電話でGo Toトラベルの是非についてのアンケートを実施。賛否あった“岩手県民の本音”を再公開する。

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 政府の観光支援策「Go Toトラベル」事業が波紋を広げている。当初は8月以降に開始する予定だったが、7月10日になって突如7月22日に前倒しして開始すると発表。二転三転して、7月16日午後、赤羽一嘉国土交通相が「東京発着の旅行を対象外にする」と発表した。

「国のほうで、よーく、ご判断されたことかと。一方で国として都民、国民に対しての説明ということが求められるのではないでしょうか」

 Go Toトラベル東京除外を受けて同日、小池百合子東京都知事は皮肉るようにこう発言した。

小池百合子 ©文藝春秋

岩手県の旅館を対象にアンケートを実施

 全国的な感染拡大が懸念されている新型コロナウイルスだが、7月17日現在、いまだ感染者が確認されていないのが、岩手県だ。“感染ゼロ県”の宿泊施設関係者は、このGo Toトラベル事業をどうみているのだろうか。

 「文春オンライン」特集班は、岩手県の宿泊施設を対象に電話でGo Toトラベルの是非についてのアンケートを実施。電話をかけた52施設中、29施設が取材に応じてくれた。そのうちGo Toトラベルに「賛成」したのが34.5%、「反対」が55.2%、「どちらとも言えない」が10.3%という結果になった。
 

岩手県の旅館を対象にアンケートを実施

「自分の旅館から感染者第1号を出したくない」

 岩手県の内陸で100年以上営業を続ける老舗旅館の関係者が語る。

「今うちは前年比10%の売上しかない危機的状況だし、(他県からの客が)来てくれたら受け入れるしかないけど、正直お客が来てくれるよりも『コロナに罹りたくない』『絶対に自分の旅館から感染者第1号を出したくない』という気持ちの方が強いですよ」

 ほかにも多くの施設で「なにより第1号を出したくない」という声が。

「絶対に自分のホテルから第1号を出したくない。今Go Toトラベルをやったところで、県外からの来客があるとは思えないし、効果ないんじゃないですか。正直、東京のお客さんが来るとドキッとする」(宿泊施設支配人)

©iStock.com(画像はイメージです)