壁の落書きに、当時の人々の思いが染みついている
現在、2020年2月24日まで「京成リアルミュージアム」として、鉄道関係の展示会を開催中だ(土日・祝日のみ)。ドーム屋根の下にスカイライナーの1/2カットモデルを置き、コンコース1階に展示物を並べ、ミニ鉄道博物館のようになっている。もうすぐ終わってしまうけれど、定期的に開催してほしいと願う。
また、3月1日、7日、8日は「桜の街の音楽会」を開催する。京成沿線の自治体に住む小学生以下の子どもと保護者を招待するという。博物館動物園駅を観に行きたいなら、京成電鉄の公式サイトを要チェックだ。
どんなイベントで来たとしても、ぜひ壁の落書きを楽しんでほしい。壁に近づいて見ると、無数の落書きがある。乗降客も少なく、駅員の目の届かないところでいたずらする人が多かったのだろうか。不謹慎なことだけど、今となっては、この落書きに当時の人々の思いを感じとれる。改修時に壁を塗り直さず、そのまま残しているところも京成電鉄の粋なはからいだ。公序良俗に反するものだけを消すに留めたそうだ。
壁のタイルが大量に剥がれている場所があった
ちなみにマナーポスターには「永遠にゾウやペンギンたちを見守ってあげて!!」と落書きされている。「ゾウとペンギン」とは、プラットホーム階にある絵を指している。東京芸術大学の学生が描いたと言われているけれども、正式な記録はないらしい。つまり、依頼した記録もなければ許可した記録もなく、ましてや作者も不詳である。
プラットホームへ降りる階段からは立ち入り禁止になっている。埃が多く滑りやすい上に、老朽化のため壁や天井の部材が剥がれ落ちる危険もあるという。今回の取材はヘルメットと安全帯を着用の上で特別に入れていただいた。たしかに壁のタイルが大量に剥がれている場所があった。東日本大震災の影響かもしれない。ペンギンの絵はかなり色あせている。ゾウの絵の壁は、残念ながら原形を留めていない。
それにしても落書きが楽しい。誰もいないプラットホームに、駅が現役だった時代の、たくさんの人々の思念が漂っている気がする。意外にも定番の「○○参上」や「相合い傘」は少なく、「ぜひ再開して」「また来ます」などの願い系が多い。休止が決まってからの書き込みだろう。たとえば……。
「×××サワコ 初めて博物館動物園に来てまた来ようと誓い合う二人 駅員さん消さないで」
……サワコさん、消さないで残っていますよ。
写真=杉山秀樹/文藝春秋
2020年上半期シェア部門BEST5結果一覧
1位:「すべて佐川局長の指示です」森友事件で自殺した財務省職員「遺書」入手
2位:「向こうで映画見るけどあなたもどう?」元カルト信者の私が『ミッドサマー』に覚えた既視感
3位:廃駅となった博物館動物園駅に潜入した――京成上野駅からわずか0.9kmの“非日常空間”
4位:《絶対変なことしない》《でもキスしたい》幻冬舎・箕輪氏が不倫関係を迫った「エイベックス松浦自伝」出版中止の真相
5位:キスも……慶応病院研修医「集団感染」40人懇親会で何が起きていたか