「こうして『東京問題』が世の中で話題になったことで、軽症者用のホテルが確保されていないといった大事な問題に焦点が当たったのも事実。その意味では、私があえて『東京問題』と発信したことにも効果があったのではないか、と思っています」

「文藝春秋」9月号のインタビューにそう語るのは、菅義偉官房長官(71)。新型コロナウイルスの対応を巡って、講演で「この問題は圧倒的に東京問題と言っても過言ではないほど東京中心の問題になっている」と述べるなど、名指しこそしないものの、小池百合子都知事に批判の矛先を向けてきた。菅氏が小池氏に不満を抱く理由とは何なのか――。

菅義偉官房長官 ©文藝春秋

「自分の責任問題になると思われたのかも」

 菅氏が指摘したのが、「軽症者用のホテルが確保されていない」という問題。東京都の感染者数は7月2日に100人を超え、7月9日に200人を超えるなど急増していたにもかかわらず、都はこの間、軽症者や無症状者が療養するホテルの大半を、契約期限切れに伴って解約してしまったのだ。

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「6月30日時点では受入可能室数は2865室でしたが、7月7日時点で1307室、7月16日時点では371室にまで減っていました。『費用が無駄』との指摘もあったようですが、財源を負担するのは都ではなく、国です。ホテルで療養すべき軽症の方が街中で出歩いたりすれば、感染は想定以上に拡大し、医療崩壊を招きかねない。東京都では今になってホテルの確保を急いでいるようです」

小池百合子都知事 ©共同通信社

 こうした状況下で浮上したのが、観光振興策「GoToトラベル」の“東京除外”だった。菅氏自身も7月中旬時点で東京の数字が突出していることを受け、経済へのマイナスの影響を考慮したとしても、東京だけは除外すべきと考えていたという。

「首都圏の1都3県を対象から外すべきという意見もありましたが、東京都と比べれば感染者数が全然違います。神奈川県の黒岩祐治知事も千葉県の森田健作知事も『国の観光事業に期待する』と発信されていましたね。そうした地元の声は大事にすべきだと思いました」