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「政府の追認機関だ」との批判にどう答える?

 ただ、感染が広がる大都市部からの往来は、これから地方に拡散するリスクを伴う。「お盆の帰省」を前に地方の知事から危機感の表明が相次ぐなか、「Go To トラベル」を推進してきた菅義偉官房長官は、移動の一律自粛には一貫して否定的。そんな政治的“風圧”の強い局面で、分科会は判断を求められた。7月16日の第2回会合で了承したが、問題はその開催が、政府が「東京を除外する」と公表した直後だったため、「分科会は政府の追認機関ではないか」という批判が寄せられたのだ。

西村コロナ対策担当相

 当時の経緯について尾身氏はこう答えた。

「16日の分科会の数日前には、『もう少し感染状況を分析してしっかり議論した上で決めるべきだ』と、政府には建言していました。ところが会合の直前に、政府が『東京を除外した上でやはり22日から実施する』と決定した。建言は採用されなかったということです。分科会の場では、構成員の一人から『大阪府は除外しないのか』という疑問が出されましたが、『東京除外』については、メンバーから異論は出ませんでした」

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「分科会は、経済も動かしながら、医療体制の破綻も防ぐこと、その両方を成り立たせるこの『細い道』を探らなければならず、完璧な答えがあるわけではありません」

伝播は〈3密+大声〉の場に集中している

 その手がかりになるのは、これまでに蓄積された疫学データだ。

「伝播が起きるのは、夜の街やライブハウス、小劇場など、基本的には密集、密接、密閉の〈3密〉プラス〈大声〉の状況下に集中していて、新幹線や飛行機の中で感染したという例は、今のところ1件も報告がありません。
 

 

 つまり、旅行先で〈3密+大声〉の場に足を運ばない限り、旅行そのものが感染を広げることはない、と考えています。一方で、東京が全国各地の感染の“出発点”となっており、特に夜の街から飛び火している、という認識は共有されていたのです」

 ただ政府の方針決定が先んじたことに、「結論ありきではないか」という不満が分科会内部からも漏れた。