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「帰省は慎重に判断を」コロナ分科会・尾身茂会長が独自取材で吐露した“迷いと苦心”

「帰省は慎重に判断を」コロナ分科会・尾身茂会長が独自取材で吐露した“迷いと苦心”

“政府の追認機関”との批判もあるが…

2020/08/07
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「専門家の提言が採用されないことはある」

 確かに、前身の専門家会議を閉じるにあたって、座長だった脇田隆字国立感染症研究所長や尾身氏らが記者会見し、〈専門家は助言を行い、政府はこれを参考としつつ政策決定を行う〉とあるべき役割分担を描いて見せたのは、わずか1か月前の6月24日のことだ。

 Go To トラベルの決定プロセスがその理想から外れたことに、困惑があったことは想像に難くない。だが、尾身氏は「政策を判断するのも責任を負うのも政府である以上、意見を採用される側の専門家の提言が採用されないことはある」と割り切って言った。だからこそ、専門家としての判断は今後も遠慮なく伝える、と。

分科会後の会見

「お盆の帰省」を一律に自粛要請はしない、でも感染症対策ができそうになければ控えて――尾身氏の5日のメッセージは官邸にも配慮しつつ、帰省しない選択肢をあえて書き込んだ。国民の実際の行動選択につながるよう、会議開催を待たず、メールでメンバーに合意を取りつけ、会見した。これらは、機を逸せば伝わらない、という専門家の決意の現れにも映る。

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再びの緊急事態宣言もありうるのか?

 尾身氏は青春時代、小林秀雄の「無私の精神」に影響を受けたと、私の取材に対して明らかにしたことがある(拙稿「ドキュメント 感染症『専門家会議』」参照)。その小林が1960年に発表したそのエッセイに、こんな一節がある。

〈実行家として成功する人は、自己を押し通す人、強く自己を主張する人と見られ勝ちだが、実は、反対に、彼には一種の無私がある〉(『小林秀雄全集第12巻』新潮社刊)

 各方面の専門家を束ね、政治と向き合う尾身氏は、経済を機能させながら感染を抑えるという難題を解決し、「実行家」としてその役割を果たすことができるのだろうか――その決意を尾身氏に問い、感染状況によっては緊急事態宣言を再び出すこともありうるのか、具体策も訊いた。そのインタビューをもとにした手記「緊急事態『再宣言』はありうる」は「文藝春秋」9月号及び「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

 その語り口は、「私も間違うことがあるかも知れない」と、時折口にしながら言いたいことを言う、独特の“尾身節”だ。

出典:「文藝春秋」9月号

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緊急事態「再宣言」はありうる
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