2020年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ビジネス部門の第3位は、こちら!(初公開日 2020年3月25日)。
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シャープは3月24日、三重工場(三重県多気町)でマスクの量産を開始した。元液晶工場のクリーンルームで作るマスクは政府が買い上げ、新型コロナウイルスの感染拡大でマスクが不足している施設などに配布する。
カラー液晶ディスプレーの生産拠点でマスク作り
シャープの親会社である台湾、鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴー)前会長の号令一下、中国子会社のフォックスコン(富士康)もマスクの量産を始めている。非常時における反射神経の良さは、日本企業も大いに学ぶべきだろう。
シャープがマスクを作る三重工場は、建設に約400億円をかけて1995年から操業しているカラー液晶ディスプレーの生産拠点だ。パソコン、ワープロなどに使われ始めたTFT(薄膜トランジスタ)方式のカラー大型液晶ディスプレーを生産していた。シャープの液晶事業は三重工場と天理工場(奈良県天理市)で始まり、液晶テレビ「アクオス」の大ヒットを受けて、亀山工場(三重県亀山市)、堺工場(大阪府堺市)に広がっていった。
三重工場では現在、スマートフォン、タブレット端末、カーナビゲーション用の中小型液晶パネルを生産している。
「チリ一つの侵入も許さないほどのハイスペック」
「マスクの生産を検討せよ」
戴正呉社長の指令が飛んだのは2月中旬。戴が旗振り役になって、遊休状態だったクリーンルームにマスクの生産設備を備え付け、経産省の支援を受けて不織布など必要な資材を調達した。近く、生産装置がもう1台加わって生産能力は1日当たり20万枚になり、さらに3台追加して1日当たり50万枚の生産を目指す。液晶パネル工場のクリーンルームは「チリ一つの侵入も許さないほどのハイスペック」(シャープ関係者)で、この上なく衛生的だ。マスク生産にはうってつけだ。
最初にマスク生産の号令をかけたのは、前会長のテリー・ゴーに違いない。ホンハイの中国子会社、フォックスコンは、すでに2月の初旬、自社用にマスクの内製を決めており、現在は龍華工場(広東省深圳)に使い捨てマスクの生産ラインを5本、医療用「N95」マスクの生産ラインを1本、設置している。3月3日に台湾で開いた投資家向け説明会で、同社はマスクの生産が400万枚に達したと発表し、マスク製造機器の内製も進めることを明らかにした。
三重工場のマスク生産装置がホンハイ製かどうかは明らかでないが、マスク生産のノウハウはホンハイから提供されている。