予告編を観た市議たちからは「富山ではどこでやるんだ」
――異色のドキュメンタリーを手がけたお二人にとって、ドキュメンタリーの最大の魅力とは何でしょう。
砂沢 自分と重ね合わせられる部分に出会ったときに、心が動く。そこに魅力があるのかなと思います。もちろん劇映画だって、自分に重ね合わせられる部分はあります。でも、フィクションと違うのは、その重なり合う部分が事実であるところ。事実であることの重みを感じると、ドキュメンタリーの魅力から逃れられなくなるんじゃないかと思います。
五百旗頭 やっぱり、予期せぬことがいっぱい起きて、その素材の輝きが劇映画をも上回る迫力につながるところですかね。いくら編集のテクニックでいいものにしようとしても、素材が悪かったら限界がある。全ては素材次第。その厳しさを持ったジャンルだから、面白いんじゃないかなと思います。
砂沢 『はりぼて』の編集は五百旗頭が中心にやってくれましたけれど、現場で僕が取材中に感じていた感情とか気持ちをしっかり残してくれていると感じました。空気感を残して時間を切り取っているんですよね。
――ドキュメンタリーは興行的に厳しい、なのに制作にはお金も時間もかかる。そんなドキュメンタリーの世界で狙っていきたいことは何ですか?
五百旗頭 ドキュメンタリーが売れる面白いコンテンツであることを示していきたいです。これまでローカル局のドキュメンタリー番組って全国ネットで放送されたら万々歳だけど、番組自体にスポンサーをつけて売るわけでもないし、言ってみれば単なる「金食い虫」のところがありました。でも状況はちょっとずつ変わってきていて、東海テレビのドキュメンタリーが全国で映画展開されていたり、世界的にはNetflixがどんどんドキュメンタリーの新作を配信したりしています。そうならば、直接自分たちの作品だって東京だけでなく、アジアなり世界なりに発信して勝負していかなければダメなんじゃないか、勝負していけるんじゃないかって思っています。どうせドキュメンタリーだから、というあきらめのムードをなくしていきたい。
砂沢 予告編映像を観た市議たちからは「いつから上映されるんだ」「富山ではどこでやるんだ」というものから「正直やめてほしい」というものまで、公開前から大反響です(笑)。この反響の波を、富山だけでなく、日本各地、そして世界にも広げていけたらなと思っています。