2016年8月、富山のローカル局「チューリップテレビ」のニュース番組が「自民党会派の富山市議 政務活動費事実と異なる報告」とスクープ。日本記者クラブ賞特別賞、ギャラクシー賞報道活動部門大賞、菊池寛賞を総ざらいした一連の報道によって “富山市議会のドン”といわれていた自民党の重鎮をはじめ、半年の間に14人の議員が辞職していった。
約4年の歳月を経て映画化された政治ドキュメンタリー『はりぼて』(8月16日公開)では、政治家と取材者の人間臭さがあぶりだされ、「政治とカネ」を巡って随所に笑いの要素も込められた異色の作品だ。一方で地元の議会や議員たちをローカル局が徹底追及することへのハレーションをどうしても想像してしまうが、今は取材チームの半数が報道の現場を離れ、議員やその家族も新しい人生をスタートさせているという。単なるきれいごとで終わらせることのできないスクープ報道の映画化で、何を伝えたかったのか。これからのドキュメンタリーの世界で狙っていきたいこととは? 当時取材チームのメンバーであった監督の五百旗頭幸男さん、砂沢智史さんに話を聞いた。
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役者以上に役者じみた議員や市長
――いわゆる「政治とカネ」がテーマのドキュメンタリーと聞けば、難しそうだな、真面目そうだなと構えてしまいますが、笑いどころ満載の作品でした。
五百旗頭 出てくる議員しかり、市長しかり、役者のキャラが立っていて、役者以上に役者じみていますよね。ですので4年前にこの問題をドキュメンタリー番組にした時から、これは映画っぽいな、映画にできるなって思っていたんです。
――ちょっと悪意がある? と思ってしまうような画の挟み方とか、「水曜日のダウンタウン」みたいで。
五百旗頭 それ、最高の褒め言葉ですよ(笑)。
――五百旗頭さんは一部取材もされていますが主に編集・構成を担当。取材のメインは富山市政担当記者だった砂沢さんだったんですよね。そもそも「富山市議14人ドミノ辞職」のきっかけとなる取材は何だったんでしょうか。
砂沢 映画にも経緯が出てくるように、市議の議員報酬引き上げが最初のきっかけです。「金沢市の市議と同じ働きをしているから、同等の月額70万円に引き上げる」みたいな、雑な議論が行われるんですけど、じゃあ富山市議の妥当な報酬額っていくらだと聞かれるとこっちも根拠がない。それで、議員はいつもどんな仕事をしているのかをきちんと精査しようと取材チームが作られました。議員の活動を知るためにちょうどいいのが政務活動費報告書。ここに記載されたお金の使い道、領収書類を丁寧に見ていけば、議員の仕事に対する報酬の基準が見えてくるはずだと調査を始めたんです。