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 公衆衛生に関する国際機関の調査で、ビハール州では主婦の85%がトイレにアクセスできておらず、「インドで最も衛生状態が貧しい状態」になっていることも報告されているが、調査したトイレのない家庭のうち「健康のためにトイレがほしい」と回答したのは1%にすぎず、「安全のため」と答えた割合が49%と最も多かった。女性や子どもたちは、どこから降りかかってくるかもわからない危険と隣り合わせの中、野外で用を足す日々を送っていたのだ。別の報道では、水の供給や衛生問題に取り組んでいる国際的なNGO「ウォーターエイド」が「インド人女性の三分の一が、日没後に野外で用を足すことを強いられている。女性が一番無防備で、危険にさらされやすい時に、毎日こうした危険を冒しているのは衝撃だ」と、現状を強く批判していることも伝えている。

看過できないレイプ事件の多さ

 日本では、インドと言えば「カレー」や「ターバン」といったイメージを思い浮かべる人が多いが、女性を中心に「レイプが多い」という点を挙げる人も少なくない。2012年12月には、ニューデリーで路線バスを装った車に乗った23歳の女子学生が、運転手ら6人にレイプされたうえ、鉄パイプなどで激しく暴行された後に路上に投げ出され、2週間後に死亡する事件が発生。これに激昂した市民らが、性犯罪に対する厳正な対処と女性の権利向上などを求め、インド各地で大規模な抗議行動を引き起こす事態に発展している。この事件や抗議行動は日本を含めた世界に報道され、ドキュメンタリー映画も作成されたことから、インドにおけるレイプ犯罪の深刻さが広く印象づけられることとなった。

写真はイメージ ©iStock.com

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 実際に、インドの各新聞に目を通すと、社会面にあたるページには連日と言っていいほどレイプ犯罪に関するニュースが掲載されている。2020年3月20日には、先に記した2012年のレイプ事件の実行犯4人に対する死刑が執行された(インドでは約5年ぶりとなる死刑執行だった)が、インドメディアは連日、執行までの実行犯らの様子などを詳しく報じた。執行当日には、収監されていた刑務所前にメディアや市民ら数100人が詰めかけ、市民の中には執行予定時間に「正義に感謝する」とのプラカードを掲げ、歓声を上げる人もいたほどだった。