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墓に行って死ぬかと思った話…14年前、秋川雅史『千の風になって』は日本人の“墓参り観”をどう変えた?

「私のお墓の前で泣かないでください そこに私はいません」

2020/08/18
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 この『千の風になって』は、『Do not stand at my grave and weep』という、外国の作者不明の詩に日本語訳をつけたもの。それゆえ、微妙に日本の墓事情と合わない部分がある。実際、「そこ(墓)に私はいません」という歌詞は、一部墓石業者から「墓否定の歌」と批判の声が上がったそうだ。

2006年に秋川雅史が発表したシングル『千の風になって』

『千の風になって』が変えた日本人の“墓参り観”

 実際、この曲のヒットで墓の購入やお墓参りが減ったともいわれるが、調べてみると、「逆に墓参りの人が増えた気がする」と歌に好印象を示すお寺もあった。かくいう私も、これを聞いて墓を身近に感じるようになった一人である。「そこにいません」「千の風になってあの大きな空を吹きわたっています」と歌われることで逆に気が楽になり、墓に対する、妙な形式ばったイメージが薄まった。普段墓にはいないので、過剰な責任感や義務感は負わなくていい。が、墓に行けば行ったで、散らばっている父の千の風が一か所に効率よく集まってくれそう、という感じになれたのだ。

 ちなみに秋川雅史さんは、2019年10月から、無量寿山光明寺(本坊・岐阜県岐阜市)の墓所のイメージキャラクターに起用されている。「『千の風になって』は、死によって束縛されるものではなく、死者を生きているときより身近に感じる歌」と感銘を受け、歌唱している秋川さんを起用したのだそうだ。この『千の風になって』の捉え方、とても理解できる。

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©文藝春秋

 なにより、このオファーを受けた秋川さんの心意気はすごいと思う。墓所のイメージキャラクターとして活動するなど、「墓にいませんって歌ってなかった?」とイジられることは火を見るより明らかだっただろうに。すべてを覚悟で引き受け活動されている秋川さん。素晴らしい。

今年のお盆、墓に行って「死ぬかと思った……」

 さて、私は、墓参りが嫌いではない。行けば心落ち着く。しかも家からけっこう近い。が、それでも今年のお盆の変化の流れに乗り、今後はリモートや代行もできれば使っていきたいと思っている。コロナ予防の意味ももちろんあるが、なにより殺人的な暑さがツラい。猛暑を超え酷暑! ここ数年のお盆は、墓に向かうのに、ものすごい気合がいる。

※写真はイメージです ©iStock.com

 今年も15日に行ってきたが、本当に死ぬかと思った。墓に行くのに「死ぬかと思った」という表現もどうかと思うが、マジで命の危険を感じる38度……。

「お父さん来たよ~」と話しかけ、ゆっくり手を合わせる余裕など無し。容赦なく照り付ける太陽の光に「暑、アツ、あっつ!」と叫びながら、墓石の横に生えた草だけチョチョッと抜き、全体にバケツの水をドバシャーとぶっかけ、手裏剣を投げるような勢いで花を替え、滞在時間10分ほどで帰ってきた。