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「怖いよ。でも…俺だけ死なんわけには」三浦春馬さん『太陽の子』慟哭シーン直前の“意外な表情”

2020/08/18
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修と裕之の「ぬくもりを感じたかった」

 さらに三浦さんは、有村架純が演じる兄弟の幼馴染み・朝倉世津を交えた3人で未来を語るシーンに関して「男2人は、この戦時中をどう乗り越えていくかっていう話をして前を向くんですけど、でも世津が男2人の話を聞いていて、『2人とも戦後のことは考えていないのか』って叱咤されるんですよね。戦後、誰が子供たちのことを教えていくのか、教育は。日本の基盤を作っていくのに……っていうことを聞かされるっていうシーンで。有村さんの涙ながらに『だからこそ、2人も生きてもらわなければ困るし、一所懸命研究してもらわなければ困るし』ということを訴えかける。その芝居がすごく印象的でしたし、本当に素晴らしかった」と語った。

有村架純 ©文藝春秋

 スタジオの有村は「本当は『手をとる』っていうのは台本にはなかったんですけれども、どうしても最後に触れたかったんですよね。なので、あそこで裕之さんの手をとって、その次に修さんの手をとって、もうなんだろう。ぬくもりを感じたかったというか。そこのシーンはものすごく本音というか」と答えていた。

 柳楽優弥も司会の近藤春菜も目に涙を浮かべていたように見えたが、こちらもこみ上げてくるものがあった。そして「土曜スタジオパーク」で挙げられたふたつのシーンを『太陽の子』本編で観た時は、さすがに涙を流さずにはいられなかった。

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©文藝春秋

裕之が抱えていた苦しみ

 太平洋戦争末期。京都帝国大学の物理学研究室で原子の核分裂について研究する石村修(柳楽優弥)は、海軍が命じた新型爆弾開発のための実験に参加していた。家を失った幼馴染みの朝倉世津(有村架純)を家に迎え、そこへ陸軍下士官の弟・裕之(三浦春馬)が肺を患っために一時的に戦地から帰ってくる。弟との再会を喜ぶものの爆弾の開発は進まず、科学者が人を殺める兵器を開発してもいいのかという疑問にも対峙する。そんななか、裕之・世津と3人で旅行に出た修は弟が抱えていた苦しみを垣間見る。

 この海辺への小旅行で、3人は若者らしいリラックスした笑顔を見せる。裕之の苦しみがあらわになるのが、特攻で仲間を見送り続けてきた恐怖と彼らに対してなにもしてやれなかった悔恨に苛まれるあまりに、彼が2人のもとを離れ、海へ身を投げようとするシーンだ。

 8月8日に放送されたドラマのメイキング番組で、三浦さんはこの夜明けのシーンの撮影を前に、「あまり思いつめすぎずにというか、逆にこんなカラッとした状況だったりとか心情をしっかり感じてあげておいて、その対比というか、メリハリをしっかり自分の中につけておいて。そのほうがやりやすいと思うので、あまり考えないようにしてます」と穏やかな表情で語っている。