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ーーなるほど。そういった意味で、「エビちゃんシアター」のユリたちは保守的な価値観の持ち主というわけでもない、と。 

高橋 そうなんです。「ポストフェミニズム」の空気が広がった2000年代って、終身雇用制が崩れ、離婚率も高まって、将来の見通しが立ちにくくなってきた時代でもあるんです。 

 そこで「女性の労働化」、つまり女性が労働市場に参入することと、「労働の女性化」、つまりサービス産業のように、コミュニケーション能力など従来女性に期待されていた能力が活きる分野が増える、ということが進みます。 

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 そんな背景から、「『女らしさ』という切符さえ持っていれば、仕事も恋愛も何とかなる」というような感覚がでてきたんですね。そのノリが強く出たのが、「めちゃ❤モテ」ブームだったのかな、と。 

 

今、日本で「フェミニズム・ブーム」が起こっている理由

ーーなるほど。2000年代が「めちゃ❤モテ」ブームや「ポストフェミニズム」の時代だった一方で、現在、私たちは「フェミニズム・ブーム」の最中にいるのではないか、という人もいます。 

高橋 英語圏では2010年代から、日本では2010年代中盤頃から「ブーム」と言っていい状況だと思います。SNSで個人が意見を発信できるようになったことから、フェミニスト的な主張を持つ人が実は多いことが可視化されました。  

 その後押しを受けて、エマ・ワトソンを始めとする著名人がフェミニストを公言し、マーケッターが「このボタンを押せばモノが売れる」と戦略を練り、パリコレで「フェミニストTシャツ」が登場する、フェミニズム色のある広告が増える……といった流れが起きたんです。 

ーーエマ・ワトソンといえば、2017年に雑誌の誌面で着用した露出度の高い衣装に批判が集まった際、「フェミニズムとは、女性に選択肢を与えることです」と反論していたことが印象的でした。 

高橋「フェミニストだって性的魅力をアピールしていい」という主張自体は、英米では1990年代の第三波フェミニズムの頃から存在していました。第二波フェミニズム(*)が「女性らしさからの解放」を訴えたのに対し、第三波フェミニズムは多様な女性がいていいじゃん、といわば「女性らしさへの解放」を訴えていたんですね。   

*……1960年代〜1970年代のフェミニズム運動。日本では「ウーマンリブ」とも呼ばれた  

 ただ、女優やアーティストといった、これまでの「女らしさ」の中で序列が高かった人たちが、「女らしさ」を売りにし、かつフェミニストを公言してもいいと主張したのは、これまでなかった。 

 簡単に言えば、ビヨンセもレディ・ガガもフェミニズムの話をするし、すっごいエロい格好しても別にいいじゃん、って。そこが2010年代以降のフェミニズムの新しさだと思います。 

(後編「上智大が性別枠なしのコンテスト新設、『島宇宙化』…ミスコンのゆくえに社会学者が注目する理由」に続く)

写真=今井知佑/文藝春秋