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月9に「男の友情」を放り込んできた意外性

 このドラマは“大人の長い夏休み”を描いた物語でもある。主要登場人物たちは悩みや問題を抱えているものの、これといった“悪人”は一切出てこないので、悲壮感なく描かれるのだ。だから、気軽にだらだらと観られる作風だった。

 一方、それまでは恋愛ドラマが主流だった月9に、男の友情を題材にした作品を放り込んできたのは意外だった。広末と稲森という女優を擁しておきながら恋愛関係は描かず。恋愛要素をあえて排除するという制作サイドの意図は明確で、これが英断だったと思う。

広末涼子 ©文藝春秋

 そう、このドラマは良い意味でハラハラもドキドキもしない。そこが“反町と竹野内のPV”と感じた最大の所以であると同時に、このドラマの“味”となっていたのである。

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最終話の「あんた」呼びに妙に共感

 余談だが、個人的にこの作品の演出で一番気に入っているのが、広海と海都が最後までお互いのことを名前で呼ばず、「あんた」と呼び合っていたこと。最終話である悲しい出来事が起き、広海を心配した海都が「寂しいな、俺にも見せられないんだ、落ち込んでる顔」と声をかける。そうまで言える仲になっていた二人だが、それでも最後の最後まで「あんた」呼び。

「広海」と「海都」と呼び合わせることで、男の友情っぽいものは簡単に表現できたと思うが、それではあまりに安直。お互いを深く理解し絆が生まれていても、必要以上に馴れ合わず、一定の距離感を保ったまま。これがいい。「そうそう、男ってこういうところあるよな!」と妙に共感してしまったのだ。

©文藝春秋
©文藝春秋

 

 反町も竹野内も今なお、芸能界の第一線で活躍中。それもこれも、23年前に完成度の高い“PV”があったことも一因だろう。『ビーチボーイズ』は一見女性ファン向けのように見えて、実は彼らの男としての魅力を男性視聴者に伝える役割も果たしていたのかもしれない。

 現在、ともに40代後半の二人だが、見た目も演技も円熟味が増し、渋くなっている。「ボーイズじゃねぇだろ!」というツッコミ前提で、今から再共演して『ビーチボーイズ』の新作も観てみたい気がする。