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「のどから手が出るほど勝ちが欲しい」石川雅規40歳、白星への飽くなき追求

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/09/01
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小川GMが称賛した「気持ちの強さ」

 筆者がヤクルトの取材を始めた2010年も、石川は開幕から6連敗と勝ちに見放された。それでも先発ローテーションから外れることなく、「この試練を乗り越えればもっと成長できる」と常に前を向いていた姿が印象に残る。小川淳司ヘッドコーチが監督代行に就任し、2戦目となる5月29日のオリックス戦(京セラ)で、チーム48試合目にしてついに初勝利。交流戦から続いていたチームの連敗も9で止めてみせた。

 この年の石川は7月10日の広島戦(神宮)から11連勝をマークし、単年での球団新記録を樹立するなど、終わってみれば自己最多に並ぶ13勝。翌年から「代行」が取れた小川監督(現GM)は、石川について聞かれるたびに「開幕から6連敗しながらも心が折れずにやってきた気持ちの強さっていうのは本当にすごい」と、この時の話を繰り返したものだ。

 それから10年。今季チーム55試合目での初勝利を目指し、8月25日の巨人戦(神宮)で42日ぶりの1軍マウンドに上がった石川だったが、1点リードで迎えた5回表にゼラス・ウィーラーに同点打を許す。

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 なおも2死満塁のピンチからセンターの山崎晃大朗が、1990年の開幕戦で栗山英樹(現日本ハム監督)が見せたスーパープレーを彷彿とさせるようなダイビングキャッチで救い、この日は5回2失点。同点のまま降板したため、またしても勝ちは付かなかった。

「やっぱり1つ勝たないと2つ目もないので、まずは1つしっかり勝って……まあ、大きな目標で200勝というのはありますけど、昔から言っているように1つ1つしか近づけないので、まずはその1つという意味でも今年の初勝利っていうのを貪欲に狙って取っていきたいなと思います」

 登板前にはそう話していたが、「大きな目標」という通算200勝へのカウントダウンは止まったまま。残り29勝という数字は、“不惑”の石川にとって決して小さくはない。

 だからこそ、早くこの「小さな大投手」に勝ちが付いてほしいと思う。今日、甲子園で行われる阪神戦で「無事に走り続ける名馬」が、今度こそ白星を手にできますように──それは全燕党の願いだ。

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