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ナチュラルに人種差別を展開中?

 実は中国では、アフリカ系の人たちに対する人種差別的な言説や広告表現などが、その問題点を誰も意識しないままに垂れ流されてしまうケースがかなり多い。例えば2016年5月には上海の化学メーカーが、汚れた服を着た黒人男性を同社の洗剤とともに洗濯機に入れてきれいに洗い上げると白シャツを着たイケメンの中国人男性に変わる――というCMを放送したことで国際的に「炎上」している。

 当時、中国のネット上には海外報道の指摘に対して「考え過ぎ」「大した問題ではない」とする反応も多く、同社も当初は批判を突っぱねようとしたのだが、あまりに海外で大きく報じられてしまったのでやむを得ずCMの放送を自粛している。

中国のネットニュース配信サイト『毎日頭条』の、広州市内の黒人問題についての記事。なぜか無関係かつ扇情的な画像がやたらに挿入されている。特に2枚目は明らかに日本の成人向けビデオの画面をキャプチャーしたものに見えるのだが……。

 また、対外貿易が盛んな広東省の広州にはアフリカ系商人が非常に多く、市内に複数のアフリカ系コミュニティが存在するのだが、一部の民間ネットメディア系の記事には「中国人の女性が襲われる」といった興味本位な記事も目立つ。なかには、明らかに偏見に基づいた画像が挿入されている例すらも珍しくない(黒人男性と若い女性の扇情的な画像ばかりでなく、ゴリラの画像が貼られている例もあった)。

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 同様の傾向はネット掲示板などではいっそう強烈で、2000年前後から続く古参BBSである『中華網社区』や『鉄血社区』など、あまりアングラ色のないサイトでも、アフリカ人を話題にしたスレッドでは堂々とヤバい画像が貼られていたりする。この手のBBSは、仮に政府批判を書き込んだりすればそう時間が経たず削除されるのだが、アフリカ系の人たちへの偏見を示すような意見や画像は特に消される様子がない。

中国のネットニュース配信サイト『蛋蛋賛』の特集。「アフリカ系男性は性欲が強くて中国の女性を誘惑する」といった危ないキャプションが大量に付けられている。

 アフリカ系の人たちに対する偏見や忌避意識は、海外に出た中国系移民も例外ではない。例えば2015年3月23日、ケニア最大の日刊紙『ネイション』が、ナイロビ市内キリマニ地区で中国人移民の経営する中華料理店が「夕方5時以降のアフリカ人の入店お断り」という注意書きを出していたと報道。当事国のケニアのみならず周辺各国も巻き込んで反発が広がることになった。

 また、昨年秋のアメリカ大統領選では多くの在米中国人移民が、移民排斥を訴えるトランプを熱心に支持する不思議な現象が起きたが、その背景にも、ヒスパニック系やアフリカ系を自分たちよりも「劣った移民」だとみなす中国人の意識が関係していたとする説がある。習近平が就任以来、オバマ政権といまいちソリが合わなかった理由も、保守的な中国人である習近平に、アフリカ系のオバマを無意識に軽侮するような心理があったためではないかと指摘する声すらあるほどだ(福島香織『米中の危険なゲームが始まった』ビジネス社)。