人権や異文化理解の意識が育たぬまま大国化した矛盾
もちろん日本でも、海外の歴史認識や人権概念に対する無理解や無神経さが、国際的な「炎上」を招く事例は少なからずある(麻生副総理の一連のナチス関連発言や、アイドルグループの欅坂46がナチスの軍服に似た衣装を着用して抗議を受けた例が代表的だろう)。ただし今回の記事からもわかるように、中国の事例は日本と比較してもヤバさの度合いがケタ違いに凄まじい。
こうなる理由はおそらく、中国において近代的な人権意識や、またそれを支える民主主義的な社会のシステムが充分に育っていないため――。さらに言えば、当局が体制維持の観点から、それらを無条件で中国社会に受け入れることを意図的に拒絶しているためだろう。また、中国は多民族国家だが、当局が「中華民族」意識(事実上は漢民族中心主義)を強調しているので、漢文化を相手に押し付けることはできても、異文化を尊重・理解する姿勢はあまり根付いていない。
人権や異文化理解に対する中国人の「意識の低さ」は、政治的な要因もあるだけに、現体制が継続する限りは今後も根本的な改善が望みづらい。だが、中国はそんな状態のままでグローバル大国に成長し、遠いアフリカにまで政治・軍事・経済の各方面で進出しているという現実がある。
動画 https://youtu.be/qxsXafclLQw
※中国の大手靴工場のエチオピア工場。毎日朝礼の際、アフリカ人従業員6000人に中国の革命歌謡『団結は力なり』を歌わせているという。
中国が今後もアフリカ各国との関係を深めていけば、中国人のアフリカ人への偏見や無理解もより露骨に可視化されていくことになる。どこかの段階で大きな揉め事に発展するのではないか。そんなことがつい心配になってしまうところである。
※本原稿でも言及した中国人の「黒人差別」意識については以下に詳しくまとめている。