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「日本の方が“閉塞感”は強い」パリから帰国した雨宮塔子が感じた“自粛の空気”

雨宮塔子さんインタビュー

2020/09/06
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日本もフランスも“自分の居場所”ではない

――これからも日本への里帰りには不自由な状況が続きそうですが、この先もずっとパリを拠点にされていくおつもりですか?

雨宮 そうですね。特に今は子どもたちの学校があるので。でもこの先、彼らが必ずしもフランスにいつづけるわけではないとも思います。他の国の大学に進学することもあるかもしれませんし、そうなったらそうなったで柔軟に考えようと思っています。

 正直な話、日本もフランスも、私は自分の居場所だと感じられないんです。今回のように日本に帰ってきても、いつも“期間限定”な感じがしていますし、かといってフランスに戻っても私は外国人。パリで20年間暮らしていても、やっぱり「居場所がない」という感覚があって……。

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日本帰国前に行った抗体検査。みなネガティブ(陰性)だった(7月15日撮影) ©雨宮塔子

 それでも今は、精神的にはフランスにいたほうがラクですね。みんな、自分の言いたいことをストレートに言うので、それがグサッと胸に刺さるときもあるけれど、慣れるとむしろ気持ちいいときもあります(笑)。イヤなものはイヤ、好きなものは好きと、常に本音でつきあえる。苦手な上司との飲み会にも行かなくていいし、気の合わないママ友とランチに行く必要もない。いい意味で“空気を読む必要のない生活”が、私の性格には合っているみたいです。

この先は「なるようにしかならない」

――さきほど「節目の時期」というお話がありましたが、雨宮さんも今年の年末で50歳。まさに節目の時期を迎えられると思いますが、ご自身の仕事に関して、何かこれからの展望は考えていますか?

雨宮 「なるようにしかならない」ですね(笑)。もともと、綿密な計画を立てるタイプではありませんが、特に今は、5年後、10年後にどんな社会になっているか誰にもわからない。報道のような「伝える仕事」は好きですし、エッセイなどの文章を書くこともライフワークとして続けていきたいですが、一方でこの先、世界は大きく変わっていくはずです。

 そうなると、私も今までとはまったく違う環境に身を置いて、新しいことを考えてみるのもいいかなという気がしています。いずれにしても、やっぱり人が好きなので、誰かと一緒にもの作りができる現場で仕事をしたいですね。これからはリモートワークがメインになっていくでしょうから、悩ましいところではありますが、その中でも自分ができることを探していこうと思っています。

©山元茂樹/文藝春秋

雨宮塔子(あめみや・とうこ)フリーキャスター/エッセイスト
1970年12月28日、東京都生まれ。成城大学文芸学部英文学科卒業。1993年TBS(株式会社東京放送)に入社。バラエティ番組のアシスタントを務めるほか、情報番組やスポーツ番組、ラジオ番組などでも活躍。1999年、6年間のアナウンサー生活を経てTBSを退社。単身、フランス・パリに渡り、フランス語、西洋美術史を学ぶ。1男1女の母でもある。2016年7月から2019年5月まで『NEWS23』(TBS)のキャスターを務める。同年9月拠点をパリに戻す。現在執筆活動の他、現地の情報などを発信している。2020年4月から、Dior「カプチュール トータル」アンバサダー就任。

「日本の方が“閉塞感”は強い」パリから帰国した雨宮塔子が感じた“自粛の空気”

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