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――日本では“自粛警察”による嫌がらせや、感染者がSNSで特定されて犯罪者扱いされる……といった問題も報じられています。

雨宮 仮に今、私がパリで感染しても、誰にも非難はされないと思います。どんなに気をつけていても、かかるときはかかるものだとみんな思っているので。そうした点は、日本とフランスの違いなのかもしれません。

安倍首相とマクロン大統領の違いとは?

――コロナ禍を通して、各国首脳のリーダーシップにも注目が集まりました。その中で、マクロン大統領と安倍首相のコロナ対応に違いは感じましたか?

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雨宮 これはコロナに限ったことではありませんが、マクロン大統領は自分の政策に対して揺るぎない自信を持っています。その政策に国民が反発して、大規模なストを行ったとしても、多少の歩み寄りは見せても根本は曲げずに自分の政策を貫いていく。今回のコロナ禍でもそれは変わらず、様々な法律がどんどん決まっていきました。「ステイホーム」でDVが増えたときには、被害者の女性を保護しやすいよう即座に法律を改正しましたし、ロックダウン解除後にマスクをはずす人が増えたときには、すぐに市中でのマスク着用を義務づけました。多少、荒い部分もありますが、その分仕事は早いです。

安倍晋三首相 ©JMPA

 それと比べると、日本は物事を決めるのに時間がかかりすぎますよね。慎重なのもいいけれど、こうした緊急事態では、急いで決めなきゃいけないこともあるはずです。それに、“アベノマスク”の件もそうでしたが、1度決めた政策は「間違えた」とわかっても、安倍首相は絶対に撤回しない。これはマクロン大統領の政策に対する思い入れとは意味合いが違います。後に引けなくなっている姿が、見ていてなんとも歯がゆいといいますか……。間違えたことは誰の目にも明らかなのに。国民の目を侮られているような気がします。

ロックダウン中にスマホをひったくられて……

――今回のコロナ禍で「自粛」や「ステイホーム」が続いたことで、お子さんとの関係には何か変化はありましたか?

雨宮 もともと、これからしばらくは家族のサポート役に回ろうと考えていたんです。去年の5月までの約3年間、子どもたちをパリに残して、日本で自分のやりたい仕事(『NEWS23』)に集中していたので。今、17歳の長女は大学進学を控えていて、15歳の長男もこの9月から高校生になります。なので、彼らにとっても大事な節目の時期に当たります。そんな矢先にコロナ禍が起こって、もちろん大変なことは多かったのですが、同時に、離れて暮らしていた子どもたちの成長ぶりを実感することもできました。

©山元茂樹/文藝春秋

 たとえば……ロックダウン中に、メトロで私のスマホがひったくられてしまったんです。人気がなくなったパリの街では犯罪者が増えて、気をつけていたのですが私も被害にあってしまって。それで「どうしよう?」とうなだれて家に帰ってきたら、娘があっという間に色々なアカウントを止めてくれて、とても助かりました。しかも、ショップが閉まっていて新しいスマホを買いに行けない私に、「私のお古をあげる」と。息子も、重い食料品の買い出しのときには、「僕が行く!」と言ってくれて。家族のありがたさをあらためて感じることができたのは、「ステイホーム」のポジティブな一面でした。